<パCSファイナルステージ:日本ハム3-2ソフトバンク>◇第1戦◇17日◇札幌ドーム

 日本ハムが誇る「天然スラッガー」が、鮮やかな逆転勝利の伏線になった。糸井嘉男外野手(31)のポストシーズン初アーチがさく裂した。2点のビハインドを背負った直後の7回1死二塁で、高めスライダーを強振。きれいな放物線は右中間席まで伸びた。「めっちゃ気持ちいい!」。一気に振り出しに戻し、勝ち越し打の近大の先輩・二岡をヒーロへと導いた。

 大一番に、驚異の脱力ムードで臨んだ。あこがれの選手は、昨季までチームメートだったダルビッシュが所属するレンジャーズの主砲ハミルトン。同じ左打ちの外野手、今季43本塁打の天才打者、「和製ハミルトン」が理想だ。試合前に打撃練習へ向かう際には「ハミルトンが通るよ」と連呼して人波をかきわけ球場入りし、その気になって調整。本家顔負けの会心弾をかけた。

 初戦から、1年前の借りを返した。昨季は8月に右足への自打球の影響で、小指を「親指みたい腫れた」ままポストシーズンへ突入。強烈な痛み止めを服用し、胃も荒れて体重が激減しても強行出場して第1Sで3安打と奮闘したが、敗退した。悲壮な決意を胸に今季は、好調を維持して大舞台に乗り込んだ。お立ち台で快打の要因は「規則正しい生活です」と絶叫。3万観衆の爆笑を誘うトドメの一撃もかけ、大勝負の号砲を鳴らした。【高山通史】