西武の「ぎんもりコンビ」が「ありなしコンビ」を超える。11日、所沢市の西武第2球場で正捕手を争う2人が今年初めて自主トレでそろい踏みした。昨季は高卒新人で46年ぶりの3戦連発を放った森友哉捕手(19)がティー打撃。その横で炭谷銀仁朗捕手(27)が黙々とマシン打撃をこなす。期待の2年目とFA権行使せずに残留を決断した注目の2人。戦いの幕が開けた。

 正捕手は1人。だが鈴木本部長が球史から例外を挙げた。「捕手2人制で最高だったのは梨田と有田」。名将西本監督が近鉄を率いた時代に強肩の梨田昌孝(日刊スポーツ評論家)、強打の有田修三がマスクをかぶり合った。他球団から「正捕手が2人いる」と“ありなしコンビ”は恐れられた。

 互いの特長を生かせば1+1=3になる。強肩、リードなら炭谷、強打なら森だ。森は「武器はバット。でも捕手として信頼されるようになりたい」と総合的な成長を掲げた。昨季盗塁阻止率4割4分4厘の炭谷も「梨田さんのリーグ記録(5割3分6厘)を超えたい」と特長を伸ばしつつ「打率は低くても出塁率とかチーム打撃で貢献したい」と打撃向上を図る。

 仲良く正捕手の座を分け合うつもりは、もちろんナシだ。炭谷は「いい意味で、2人でやっていこうという気持ちはない。1人で守る。そのためにチームに残った」と言葉に力を込めた。森は「銀仁朗さん(炭谷)がいるのでいろいろ学びたい」と内に秘めた。競争の末に“ぎんもりコンビ”が存在感を高めれば、7年ぶりの日本一の可能性は大アリだ。【広重竜太郎】

 ◆梨田と有田

 梨田は72年、有田は73年に近鉄へ入団。有田が86年に巨人へ移籍するまで、一緒に13年間プレーした。この間、100試合以上先発マスクをかぶったのは梨田が3度、有田が2度で、2人とも60試合以上の先発マスクが77、82、84年の3度ある。併用のため、規定打席到達は梨田が3度、有田は1度しかないが、ともに通算100本塁打を達成。ゴールデングラブ賞は、梨田が4度、有田も2度獲得。有田はエース鈴木啓とコンビを組むことが多かった。