4月に古希を迎えたプロレスラー藤原喜明(70)が5月10日、「刷新 藤原ノート」(新紀元社)を出版した。師匠カール・ゴッチに教わった関節技をイラストで解説した「藤原ノート」は33年前に刊行された幻の書。今回の復刊について、藤原に話を聞いた。【取材・構成=高場泉穂】

「藤原ノート」を手に写真に納まる藤原喜明(撮影・垰建太)
「藤原ノート」を手に写真に納まる藤原喜明(撮影・垰建太)

プロレス、格闘技ファン待望の書「藤原ノート」が10年ぶりに復刊した。本の基となったのは約40年前に藤原がゴッチから学んだ関節技を記したノート。当時そのノートを見たゴッチが顔色を変え、以来技を教えなくなるほど詳細な説明がそこには記されていた。

33年前に出版され、その後しばらく入手困難本となっていたが、09年に「復刻 幻の藤原ノート」(講談社)として復刊。今回は10年ぶり2度目の復刊となる。背景には関節技への注目の高まりがある。新たにおさめられた格闘家中井祐樹(48)との対談で中井が指摘しているように最近の柔術の大会で藤原が記した技が再び使われているという。藤原は「30年前は(読者や世間が)分からなかったんじゃないかな。30年たって、やっと認められたって感じかな」と喜ぶ。

「きったねえ体になったけど、動けはするんでね」と70歳になった今も変わらずリングに立ち、関節技をかけ続けている。今回の取材時には記者にもその技を実演してくれた。「女性をモーテルに連れていく時はこうやって…」と冗談を言いながら、左手首をつかんで軽くひねられた。一瞬で相手の関節をきめる技術は今なお健在だ。

巨人長嶋茂雄終身名誉監督に贈った似顔絵と参考にした写真を披露する藤原喜明(撮影・垰建太)
巨人長嶋茂雄終身名誉監督に贈った似顔絵と参考にした写真を披露する藤原喜明(撮影・垰建太)
自身の描いたユニークな絵を披露する藤原喜明(撮影・垰建太)
自身の描いたユニークな絵を披露する藤原喜明(撮影・垰建太)

今回は関節技の極意に加え、藤原の絵、陶芸、盆栽、小説などさまざまな作品もおさめられた。本を出版した新紀元社の宮田一登志代表取締役は「ちょうど古希になられたので、藤原組長の魅力を全部紹介しましょうということで、付けさせてもらいました。本当に多才で私は『プロレス界のダ・ビンチ』だと思っています」と説明。作品はいずれも質が高く、見応え十分だ。藤原はプロレスも芸術も好きなことは「全部1番。全部一生懸命やる」と話す。「人はどっちみち死ぬからね。一生懸命やんないとおもしろくないじゃん。一生懸命やって、だめでもにっこり笑って死ねるから」と持論を語った。

自身の作った数多くの作品を背に写真に納まる藤原喜明(撮影・垰建太)
自身の作った数多くの作品を背に写真に納まる藤原喜明(撮影・垰建太)

今後の人生の目標を聞くと「サチコともミドリともキャサリーヌ、ナポリタン、ミートソース、カルボナーラとも全部ヤったし、最近は古希をむかえコキコキもしないけど、ボッキボッキもしないからね。イくなら天国へいきたいけど、おれは地獄だろうなぁ…」と楽しそうに語った。

◆藤原喜明(ふじわら・よしあき)1949年(昭24)岩手県北上市生まれ。72年に新日本プロレスに入門。80年から米フロリダ、カール・ゴッチ道場で修行し、多彩な関節技を習得。「関節技の鬼」として知られる。84年からUWF入り。91年にプロフェッショナルリング藤原組を旗揚げ。現在団体はなく、フリーとして活動。