スポーツ界が揺れている。プロボクシングでは一連の計量騒動があった。3月の山中とネリの直接再戦は世間でも大きく問題視された。国内が怒りで沸騰したが、約1カ月後には落胆が渦巻いた。比嘉が世界戦で日本人で初めて王座剥奪。前戦で日本タイ15連続KOで故郷に錦も、試合はタオル投入でのTKO負けで日本新記録もフイになった。

日本タイトル戦なども失格や棄権が続き、業界も重い腰を上げた。日本ボクシングコミッション(JBC)の現行ルールは「契約書に規定した違約金の支払い、その他の制裁を科す」というもの。通常は厳重注意、階級変更勧告程度にとどまっていた。ネリ、比嘉の場合は倫理委員会で日本で活動停止、ライセンス無期限停止処分などを下した。新ルールが以下のように決まり、9月1日から適用される。

◆試合出場の可否

(1)体重超過が契約体重の3%以上の場合 JBCルールに基づく2時間の猶予は与えない。よって計量失格となり試合出場は不可(試合は中止)

(2)3%未満の場合 ルールに基づき2時間の猶予が与えられる

2時間の猶予後も体重超過の場合

<1>計量失格とし、試合出場は不可(試合中止)

<2>試合中止をしない場合は、試合当日に再計量を義務付ける。再計量時の体重が契約体重を8%以上超過した場合、試合出場は不可(試合中止)

◆ペナルティー及び処分

(1)上記の(1)及び(2)の<1>に基づき試合中止する場合 ファイトマネー相当額を制裁金として、1年間ライセンス停止、次戦以降は1階級以上の階級への転向を義務付け、体重超過ボクサーのマネジャーを戒告

(2)上記の(2)の<2>に基づき試合中止をしない場合

ファイトマネーの20%を制裁金として、6カ月ライセンス停止、マネジャーを厳重注意

3%の線引きは経験とデータから「落ちないし、落とさせるのも危ない」と決められた。バンタム級の3%は1・6キロのため、2・3キロオーバーのネリは今後即試合中止となる。減量は大半が本人任せも再犯も多く、ジムの管理体制の甘さを指摘する声も強い。最近は計量に現れずに棄権のケースが増えた。

アマの日本ボクシング連盟では山根会長体制が大問題となった。他競技も不祥事などが相次ぎ、ガバナンスやコンプライアンスが問題になった。日本は独自のジム制度が基盤だが、時代遅れした部分もある。減量以外でもファイトマネー、移籍などの課題があり、JBCと日本プロボクシング協会が協議している。

1年前は男子の日本の世界王者が12人いたが、ここにきて5人に減った。ボクサー人口も減っている。今回のルール改正は世界でも画期的なものと言える。旧態依然とした体制、体質の改善への積極的取り組みも望まれる。

【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

前日計量で900グラムオーバーとなった比嘉はその後の再計量を断念(2018年4月14日撮影)
前日計量で900グラムオーバーとなった比嘉はその後の再計量を断念(2018年4月14日撮影)