大みそかのRIZIN14大会はメディアの雰囲気が違った。普段はネットや専門誌が大半でスポーツ紙もいつも3紙程度だが、見慣れぬ一般紙や海外メディアの記者も詰めかけ、インタビュールームに座りきれなかった。

お目当てというか、仕方なく? 取材したのは、メイウェザーという存在にほかならない。現在は引退「状態」であり、本人もパフォーマンスと言ったエキシビションという「花相撲」にもかかわらず。国内の知名度は低いかもしれないが、世界のスーパースターの動向は見逃せないということだろう。

格闘技ファンの那須川への期待感は大きく、会場の熱気や盛り上がりに、見慣れぬ記者は驚いていた。観客数は2万9105人。午前に開催した別の大会も7498人を集めた。格闘技ブームは去ったが、逆にビッグイベントが減ったことでの希少価値や、初詣ツアーのファンも多いらしい。

那須川を初回KOした姿に、帰りの車中で「メイウェザーってすごいんだね」なんて声が聞こえてきた。いまだ話題になっていて、今回は海外からも続報が止まらない。ボクシング界はアンチも多く冷ややかだが、体重やルールのアンフェア、スターのわがままぶりからマッチメークを批判。那須川をかばう声も多かった。

取材した記者としては十分に楽しめた。ちょうど黒塗り自動車が十数台連なり、取り巻きと会場入りするところをを見かけた。那須川にバンテージを巻き直させたり、マスクをして入場し、トランクスには自分の顔と札束がプリントされていたり。

試合自体はさばいてお茶を濁すかと思ったら、あっという間にけりをつけて踊りだした。試合後は成田空港へ直行のはずが、年を越しながら演説して消えた。発表会見と2回取材し、何より日本のリングに上がった姿を見ることができた。注目を集めたのは間違いなく、RIZINも世界へアピールには成功したと言える。

前日にはボクシングのトリプル世界戦があったが、観衆は約3800人とケタが違った。総合格闘技などは3回など試合時間が短く、何よりKO決着が多い。ボクシングは最長12回で、かみ合わずに渋い試合もままある。技術戦の玄人好みとも言われるが。そんな競技の違いがファン動員の差の一因なのだろう。

那須川にはボクサーへの試金石とも言えたが、このハンディ戦は荷が重かったか。中学時代からボクサーでも世界王者になると素質やセンスの評価は高く、今回も同じ階級ならという声も根強い。逆にそう甘くないよと言う声もある。

キックボクシング出身ボクサーは多いが、なかなか大成しない。現役では藤本京太郎がヘビー級で世界ランク入りと異彩も、あとは日本王座獲得がやっとだ。ここはこの「世紀の一戦」をステップに、那須川にいち早く転向を決断して、チャレンジしてもらいたい。

あの人気、動員力は魅力たっぷり。世界王者は誕生しても盛り上がらない、今のボクシング界の願いだろう。【河合香】