WBO世界フライ級王者・田中恒成の会見場を訪れ握手を交わす木村翔(2019年3月16日撮影)
WBO世界フライ級王者・田中恒成の会見場を訪れ握手を交わす木村翔(2019年3月16日撮影)

前WBO世界フライ級王者木村翔(30=青木)が3月30日、中国・上海で再起戦を行い、3回TKO勝ちを飾った。17年6月、中国に乗り込んで五輪金メダリスト・鄒市明から同級王座を奪い、中国で人気が爆発した男は、リング上から「また世界チャンピオンになりたい。中国で」とやって、大歓声を浴びたらしい。

かっこええがな。

私は大阪が拠点なんで、木村に話を聞いたんは1度しかない。3月16日、岐阜メモリアルセンターで愛ドーム。昨年9月に木村からベルトを奪った現王者田中恒成の初防衛後です。

テレビ中継のゲストやった木村は丁寧に報道陣の質問に答えてくれた。

「前半は田口選手が頑張ったけど、後半は田中選手がスピードを生かして、けっこうな差があったと思う。田中選手は僕との試合から本当に強くなってましたね。パンチが重い。ジャブ1つとっても音が違う。田口選手はゾンビのように頑張ったと思いますよ」

田中と、挑戦者の元WBA&IBF統一ライトフライ級王者田口良一の間にあったと感じた力の差。田口を「ゾンビのように」と表現したのは、間違いなく畏敬の念を込めて、です。「ゾンビ」のくだりはちょっと感動したし、そんな言葉のチョイスこそが、木村の真っすぐな人柄を表している気がしたもんです。

誰かが聞いた。田中ともう1度、戦いたくないか?

「それはもちろん。チャンスがいただけるなら、どこででも。僕の中で、決着はついてませんから」

田中戦は0-2判定負け。ジャッジ3人の採点は、112-116、113-115、114-114。1人が4ポイント差、1人が2ポイント差。そして1人がドローの僅差でした。

さて、ここからは私の勝手な願望です。

世界3階級王者の田中は年内、防衛路線(できて2試合?)を敷いて、来年、スーパーフライに階級を上げて4階級制覇を目指す-。これが田中陣営の基本プラン。「重要なのは誰と戦うか」「ボクシングを通じて、かっこよくなりたい」。これが田中のポリシー。4階級挑戦はいろんな選択肢が見込まれます。田中が魅力を感じている元3階級覇者でスーパーフライ級の世界王座を狙う井岡一翔がこのほど国内ライセンス再取得に動いた。夢が膨らむけど、まあ先の話やし、ちょっと置いときましょう。

問題は年内の防衛路線です。木村、田口と戦った田中は、もうフライ級に戦いたい相手が「正直いない」と言い「できるなら、他団体王者との統一戦」と希望しています。しかし、統一戦は資金面、交渉の難度からしてハードルがとても高い。それなら、木村ともう1度っちゅうんは、どうでしょう?

2018年の最優秀試合に選ばれた激戦のリマッチをクリアすれば、田中も堂々と「フライ級は卒業です」と胸を張れるんちゃいますか? 木村の胸に残る“未決着”のもやもやもスッキリするやろうし。

両陣営のみなさん、好き勝手言うてすんません。あの素晴らしいファイトをまた見られるなら、と思ったもんで。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

WBO世界フライ級タイトルマッチで激しく打ち合う田中恒成(右)と木村翔(2018年9月24日撮影)
WBO世界フライ級タイトルマッチで激しく打ち合う田中恒成(右)と木村翔(2018年9月24日撮影)