2度目の防衛戦に向けて12回のスパーリングを行ったWBA世界ライトフライ級スーパー王者京口紘人(2019年9月10日撮影)
2度目の防衛戦に向けて12回のスパーリングを行ったWBA世界ライトフライ級スーパー王者京口紘人(2019年9月10日撮影)

2度目の防衛戦を控えるWBC世界ライトフライ級王者京口紘人(25=ワタナベ)の12回スパーリングがあると聞き、試合3週間前の9月10日に所属のワタナベジムを訪ねた。

スパーリング直前、京口はおもむろに胸部を守るガードをつけ始める。「言っちゃだめだよ」とジムの渡辺会長。8月のフィリピン合宿の際、1階級上フライ級の世界トップランカー、ギエメル・マグラモとの激しいスパーリングで肋骨(ろっこつ)2、3番目の間の軟骨を骨折していた。パンチを打つ時、守る時、体を丸め、ねじる度に痛むだろうと予想された。

医師の診断は全治約3週間。その時既に痛みはなく、ガードは万が一の保護のためにつけているとのことだった。その日の12回のスパーリングもキレ味抜群。不安はないように見えた。それでも、体のことは本人にしか分からない。肋骨(ろっこつ)の状態を聞くと、「試合までは間に合う。それも含め実力。全然危惧(きぐ)していない」と言い切った。

防衛戦から一夜明け笑顔を見せるWBA世界ライトフライ級チャンピオン京口。左は井上トレーナー、右はワタナベジムの渡辺会長(2019年10月2日撮影)
防衛戦から一夜明け笑顔を見せるWBA世界ライトフライ級チャンピオン京口。左は井上トレーナー、右はワタナベジムの渡辺会長(2019年10月2日撮影)

10月1日の防衛戦で久田哲也に判定勝ちした後も、最後までそのけがのことを公の場では口にしなかった。一夜明けた2日、なぜ明かさなかったか聞くと、「なんか言い訳っぽくなるじゃないですか」と照れながら話した。京口担当となって1年弱。まだ言葉や態度に幼い面を感じることはある。ただ、今回はけがの件も含め、言動すべてでかっこいい世界王者であろうとする京口のプライドが感じられた。

17年7月にIBF世界ミニマム級王者となり、昨年大みそかにWBA世界ライトフライ級王座を奪取して2階級制覇を達成。それでもまだプロ14戦目だ。伸びしろは計り知れない。京口は言う。「ベースは確立していて、それにパーツを付け加えていく作業を追求していかないと」。

求めるのは「見てて目が離せない試合」。自分のお決まりの勝ちパターンに持っていくのではなく、相手のスタイルや試合の流れによって変化し、最終的に勝つ魅力的なボクシング。そのために、打ち方の種類、角度やタイミングなど技術の引き出しを増やすことにいま情熱を注いでいる。

今回の試合後、井上トレーナーはプロ47戦目だった挑戦者久田のうまさをたたえ、その上で「47戦した時の京口が見たいですね」と頬をゆるめた。世界王者の成長は続く。【高場泉穂】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

WBA世界ライトフライ級タイトルマッチ 京口紘人は久田哲也を判定で下し2度目の防衛に成功(2019年10月1日撮影)
WBA世界ライトフライ級タイトルマッチ 京口紘人は久田哲也を判定で下し2度目の防衛に成功(2019年10月1日撮影)