6月7日、さいたまスーパーアリーナでプロボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)がWBC世界同級王者ノニト・ドネア(39=フィリピン)との3団体王座統一戦を控えている。同興行には、元WBC世界同級暫定王者の弟拓真(26)も日本、WBOアジア・パシフィック・スーパーバンタム級の2冠を懸けた統一戦に臨み、2年7カ月ぶりに兄弟同時出場を果たす。今年2月に現役復帰を表明した元日本、WBOアジア・パシフィック・スーパーライト級王者のいとこ浩樹(30=ともに大橋)も一緒にトレーニングし、年内リング復帰を目指している。

ドネアとの再戦に向け、横浜市内の所属ジムで最終調整を続ける井上は、緊張感を保ちつつも「井上家」の連帯感に胸を躍らせている。拓真との同時出場について「試合までに一緒の気持ちでトレーニングしていけるのは、すごくプラス面になっています。何か一緒に話すことはないですが、やはり普段のトレーニングの熱量が違います。切磋琢磨(せっさたくま)というか、拓真の試合に向け、自分の試合に向けて活性化するという感じがします。もちろん刺激もあるし、相乗効果はあります」と笑顔を浮かべた。

もちろん弟も気持ちは同じだ。「調整は一緒にできるので、高め合いながらできる。きつい時こそ一緒に頑張っていけるかなと思います」と拓真。父真吾トレーナー(50)も「同じ空気、同じメニュー、同じ練習、同じ気持ち、そして同じように仕上がる。減量に入る時も同じなので絶対にいいはずです」とコメント。兄弟同時出陣のシチュエーションは、大きくプラスに働いているようだ。

さらに20年7月に日本王座陥落後、現役引退を表明していた浩樹は今年2月から一緒に練習を再開。昨年11月から井上が始めた元世界3階級制覇王者八重樫東トレーナーによるフィジカル練習にも合流している。井上は「やはり幼少期から一緒にやってきたので、違った良いものがありますね。頼れる存在が身近にいて一緒にやれることが自分には大きなプラス面になっています。3人で練習して試合するのは久しぶりなので」と心身ともに充実している様子だ。

3人そろってトレーニングする状況下で迎える井上の世界戦も19年11月以来。階級最強を決めるトーナメント、ワールド・ボクシング・スーパーシリーズのバンタム級決勝となるノニト・ドネア戦以来約2年7カ月ぶりとなる。前回は12ラウンドの激闘の末、判定勝利を挙げているが、今回は日本人初の3団体統一も懸かった重要な1戦となる。 絶好のタイミングに井上家が再集結し、ドネア戦に臨む形となったのは運命的とも言える。3人の連帯感が大一番を控えた井上にとって大きな後押しになっている。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

4月下旬にフィジカル合宿した井上家。左端から八重樫東トレーナー、井上浩樹、井上拓真、井上尚弥、井上真吾トレーナー(大橋ジム提供)
4月下旬にフィジカル合宿した井上家。左端から八重樫東トレーナー、井上浩樹、井上拓真、井上尚弥、井上真吾トレーナー(大橋ジム提供)