幕内格行司の木村寿之介(48=友綱)が東京場所で使用する軍配には、角界内外の最高級が凝縮されている。3年前、白鵬と共通の後援会関係者から軍配を贈られる際「『せっかくならトップの人の物を集めよう』と言われたんです」。軍配に描かれる蒔絵(まきえ)は、候補の中から白鵬が選んだ黄金色の鳳凰(ほうおう)。裏には、横綱昇進時の口上で述べた「精神一到」の文字。「漆塗りは輪島塗の人間国宝、文字は、27代木村庄之助さん」。すべてが最上級のものだ。

 寿之介によると、軍配は序ノ口格でも6万5000円、幕内格は50万~100万円が基本とか。この軍配は「500万円は下らない。6、700万? 値段も入れたら、4トップですね」と笑った。

 その軍配で白鵬の取組を裁くのが、寿之介の夢。だが三役格以上に昇進しなければ実現しないため、10年以上かかる。「さすがに無理でしょう。でも、一門に横綱がいるだけでもありがたいこと」。白鵬はかねて、20年東京五輪まで現役続行を宣言している。10年後は40歳を超えるが、30歳の現在も実力は角界随一。もしかしたら…と期待してしまう。【桑原亮】