またぞろ出てきた。われわれスポーツ紙やテレビのワイドショーにとって格好のネタが…。暴力やセクハラ、無免許運転といった類と、今回は趣が異なる。ただ今回の件でも、一部に相撲界が誤解されていると思われるものがあった。

 4月4日に京都・舞鶴で行われた大相撲の春巡業。地元・舞鶴市の多々見良三市長(67)が土俵上であいさつしている際に突然、倒れた。その後、救命処置を施している女性に対し、若手の行司が土俵から下りるよう、場内放送でアナウンスした問題が波紋を広げた。それに対する論調は他に譲る。

 指摘したいのは、女人禁制何するものぞ…という世論の声に乗じるかのように、同列で論じられた「塩問題」だ。女性が土俵に上がったことでその後、大量の塩が土俵にまかれたという一部報道があった。それには首をひねるしかない。

 本場所にしても巡業にしても、また各部屋の稽古場にせよ、塩をまくには意味がある。これから始まる戦いの場を清めるためにまく塩。また、力士が稽古や取組でケガをしたり、血が飛び散ったりした際にも一度、塩をまいて呼び出しさんや若い衆がはいて、清める。同じようなことが起きませんように-。神聖な土俵を鎮める、そんな思いが込められている。

 問題が起きた翌5日、日本相撲協会の尾車事業部長(元大関琴風)も「人命より大事なものは、この世に存在しません。女性が土俵に上がってはいけない、という話とは次元が違います」と報道対応で話した。その上で、この「塩報道」については「女性蔑視のようなこと(考え)は日本相撲協会には全くない。本場所でも稽古場でもケガして運ばれたり、血しぶきが飛んだり、首を痛めてひっくり返ったり(そんな)アクシデントの連鎖を防ぐために塩をまくのがボクらの世界。女性が上がったから土俵を清めるために大量の塩をまいた、というのは(報道は)残念。全くない」と肩を落とした。

 「単なるスポーツではない」といわれる相撲界。なかなか分かりにくい世界ではある。だからだろうか。同じメディアでも専門業界の外で、誤解されるような報道も昨年末から多々あった。もちろん角界も、考え直さなければならない問題を抱えている。今は、不本意なものもあろうが、メディアに取り上げられることで盲点だった角界の常識を見直す良い機会、ととらえればいいのではないか。それも懐の深さ。もちろん、今回の「塩問題」は論をまたないと思うが。