WBA世界バンタム級王者井上尚弥(25)が、WBC同級王座挑戦権を持つ弟拓真(22=ともに大橋)と一緒に世界4団体ベルトを同時に獲得するビッグプランが7日、明らかになった。所属ジムの大橋秀行会長(53)が私案として計画しているもので、井上が決勝進出し、勝ち上がってきた対戦相手次第で来夏に予定されるWBSS同級決勝の日本開催に動く意向を示した。その大舞台で兄弟ダブル世界戦を組み、4団体同時獲得を演出するプランだ。

70秒KO劇で、30カ国以上に生中継された海外にも衝撃を与えた井上に朗報だ。大橋会長は「まだ私案ですが、(井上)尚弥の決勝の相手次第では1年後の来夏にWBSSバンタム級決勝を呼べる可能性がある」と明言。その上で「すべての条件がそろえば、タイミング的に弟拓真の世界挑戦とのダブル世界戦が可能」と説明した。

現在、WBSSにはWBA王者の井上のほか、WBAスーパー王者バーネット(英国)、WBO王者テテ(南アフリカ)、IBF王者ロドリゲス(プエルトリコ)が参戦している。ルール上、王者が勝ち上がらない可能性も残るが、順当にいけば、決勝は3団体統一戦になる。現在空位のWBC王座の新王者が年内に決定するのを待つ立場にある拓真が王座挑戦できるのは現時点で来春以降。同会長は「兄弟で4団体を同時に獲得できるチャンス。やりたいよね」と声を弾ませた。

9月に拓真が東洋太平洋王者ヤップ(六島)とのWBC挑戦者決定戦に判定勝ちし、同挑戦権を得た後、井上は「自分がWBSSで優勝して拓真も(世界戦で)勝てば、兄弟2人で独占。それもいいですよ」と強い意欲を示していた。世界では兄ビタリ、弟ウラジミールのクリチコ兄弟(ウクライナ)がヘビー級で4団体を独占したのが史上初となる。日本の4団体承認後、兄弟で4団体独占となれば国内初となる。

井上兄弟の父真吾トレーナーも「その形(兄弟で4団体独占)になるなら、ぜひしてもらいたい。それまでトレーニングあるのみ」と一家の目標として掲げた。IBF王者と戦うことが有力視される井上の準決勝は米国開催が濃厚。順当に決勝まで進めば、井上兄弟のダブル世界戦で4団体独占する瞬間が日本で実現するかもしれない。【藤中栄二】

◆クリチコ兄弟 東欧出身の巨人兄弟でヘビー級4団体を独占した。身長203センチ、体重111キロの兄ビタリがWBC王者、198センチ、110キロの弟ウラジミールが3団体(WBA、WBO、IBF)統一王者だった。先にビタリが99年WBO、04年WBC王座獲得し05年に1度引退。96年アトランタオリンピック・スーパーヘビー級金メダリストのウラジミールが00年WBO、06年IBF王座を獲得。その後、現役復帰したビタリが08年にWBC王座を再奪取。11年にウラジミールがWBA王座も獲得し、兄弟で4団体で同一階級のベルトを保持した。