WBA世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)がボクシング発祥の地となる英国に初上陸した。試合10日前の8日から試合会場となるグラスゴーに入った井上がWBSS準決勝のリングに臨むまでの舞台裏を、3回にわたって連載する。

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14日午後、グラスゴーのジムで設定されたIBF世界同級王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)の公開練習で、両陣営に一触即発ムードが漂った。井上の父真吾トレーナー(47)がロドリゲス陣営から異例の「待った」をかけられた。公開練習をスマートフォンで撮影した際、相手陣営の1人に制止された。真吾氏は「当然、公開練習だったので写真を撮影しました。見つけた(相手陣営の)男がやってきて『それはできない』とジムの脇に押していった」と状況を説明。相手陣営が神経をとがらせたことで、井上-ロドリゲスの両陣営がヒートアップする一幕となった。

ルール上も問題ない真吾氏の行動。相手陣営の過剰反応に、大橋会長は「(真吾氏に)小突いてきましたからね。公開練習なのだから撮影ストップされる筋合いはありませんから。厳重に抗議しました。WBSSもそこは重大なことだと理解してくれています」と明かした。さらに「ロドリゲスもナーバスになっている印象。陣営もピリピリしすぎ」と心理戦が始まっていることも付け加えた。

無敗王者同士が注目のトーナメント準決勝で激突する。大きな期待とともに緊張のボルテージも上がってきた。【藤中栄二】