3冠ヘビー級王者のジェイク・リー(32)が、宮原健斗(32)と60分引き分けで、3度目の防衛に成功した。

王者の風格を漂わせ、堂々の試合運びだった。痛めつけられた宮原の叫ぶ声だけが会場に響き、リーはいつもの高笑いで攻撃を続けた。絞め技、蹴り、投げ、場外戦…。すべてで優位に進めたが、3カウントだけが奪えなかった。「V3達成と言っていいのか…」。ベルトを手渡されても、笑顔はなかった。

バックステージでは「俺はもっと上のステージに行く。来年もっと突き抜ける」と語った。引き分けの悔しさよりも、防衛の安堵(あんど)よりも、自分にしか出せない闘志を訴えたかった。「諏訪魔、芦野、石川…。お前らにこういう戦いができるか。悔しいなら、ちょっとは気持ちをさらけ出せ」とカメラを通じて、選手たちに語りかけた。対戦した宮原にも「プロレス界の主役になるって言ってなかったか? お前本当にこのままでいいのか」とハッパを掛けた。

6月の初戴冠後、芦野、諏訪魔、宮原と実力者相手にベルトを守り、不動の地位を築きつつある。旗揚げ50周年を迎える来年も、トップとして力強いパフォーマンスで団体を引っ張って行くつもりだ。「全日本を作り直す。俺しかできないことを見せてやる」。60分間戦い抜き、勝利こそできなかったが、王者としてさらに自覚と決意を強くした。【松熊洋介】