WBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔(32=志成)が4度目の防衛に成功した。同級6位福永亮次(35=角海老宝石)に3-0判定勝ち。区切りとなる10度目大みそか決戦を勝利で飾った。

12月3日に中止が発表されたIBF世界同級王者ジェルウィン・アンカハス(29=フィリピン)との王座統一戦の再セットに向けて、大きく前進した。

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井岡はリング上で「今回試合が決まってから、ずっと10度目っていうことを自分も思ってこれまでやっていたんですけど、いざ控室に入ると今回で10回目かといろんな感情がすごく込み上げてきました。今回1度中止になった統一戦がなくなってしまって複雑な心境だったけど、こうして応援していただいてる方たちのために試合をして、こういうときに戦っている姿を見せたいと思って試合に臨んだ。ジム関係者はじめ、スポンサー様、TBS、いろんな形のおかげでこの試合ができているんだなとひしひしと感じながら、10度目のリングに上がらせてもらいました。今回中止になった統一戦は自分の中でずっと望んでいるものなので、今回この試合を無事に勝てたので、アンカハス選手と来年統一戦できるように進めてもらうので、またさらなる目標に向かって頑張るので応援よろしくお願いします」と話した。

政府による「オミクロン株」の水際対策での新規外国人入国の原則禁止を受け、12月3日にアンカハス戦は中止となった。その後、両陣営間で「1戦挟みましょう」と合意。延期の形がとられたことで、井岡も実現可能な防衛戦に意欲を示した。福永とのV4戦は発表が12月16日。中止から一転、急きょ決まったリングだった。それでも王者は冷静に気持ちを切り替えていた。

「1度決まった王座統一戦は流れました。心境としては複雑でしたけれど、ここで立ち止まってはいられない」と口調を強めていた。コロナ禍で試合ができる喜びを感じつつ「試合をしたくてもリングに上がれない状況になった。リングに上がることができるのは、本当にボクサーとして、王者としてもうれしい。初めての状況ですが、ボクにとっての挑戦」と恒例の大みそか舞台に立っていた。

福永戦は「仮想アンカハス」だった。挑戦者がアンカハスと近い身長、同じサウスポーであったことも「試合をやろうという1つのポイントだった。サウスポーの練習してきたので、引き続き、サウスポーと戦うことは自分の中で大きかった」と振り返る。来春以降、アンカハスとの王座統一戦を見すえた戦いと位置づけた。

2020年大みそかの田中恒成(畑中)戦後、タトゥー露出を指摘され、日本ボクシングコミッション(JBC)から厳重注意処分を受けた。さらにJBCの不手際で、結果的に身の潔白は証明されたものの、ドーピング疑惑も浮上した激動の21年だった。「10回目(の大みそか決戦)で今までやってきたことを試合で(見せる)。何か伝わる熱い試合をして、少しでも盛り上げられれば」。日本ボクシング界をけん引する世界王者の1人としての使命も胸に、リングへ。しっかり防衛した井岡は、22年も躍動する。

 

◆世界スーパーフライ級戦線 WBAスーパー、WBCフランチャイズ王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)が中心。21年3月、12年のライトフライ級で対戦したライバル、ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)と再戦し、僅差判定で勝利。同10月16日に米国でゴンサレスとの3度目対決がセットされたものの、ゴンサレスの新型コロナウイルス感染で延期となっている。

IBF王者アンカハス(フィリピン)は、この大みそかの井岡との王座統一戦が延期となった。21年4月、ジョナタン・ロドリゲス(メキシコ)に判定勝ちし、9度目の防衛に成功しており、22年2月に10度目防衛戦を計画している。