前IWGP世界ヘビー級王者のオカダ・カズチカ(34)が史上4人目となるG1連覇と、自身4度目となる真夏の栄冠を手にした。

ファイナルトーナメント決勝戦で、かつて師弟関係にあったUSヘビー級王者のウィル・オスプレイ(29)を下した。史上最多28人が出場した真夏の頂上決戦を制し、今年6月に失った新日本の至宝を取り戻しにいく。

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都心で朝から昼にかけて降った雨は、とっくにやんでいた。だが、午後8時52分、オカダが再び、雨を降らせた。日本武道館に降り注ぐ「カネの雨」。必殺の短距離式ラリアット、レインメーカーでオスプレイから3カウントを奪取した。試合開始から33分53秒。やまない拍手は雷鳴のように響いた。蝶野、天山、飯伏に並ぶ、史上4人目の連覇を達成した瞬間だった。マットに大の字になりながら左腕を突き上げていた。

壮絶な必殺技の応酬だった。だが、最後はヒドゥンブレードを旋回式の変形ドライバーで切り返してフィニッシュにつなげた。「オスプレイ、最高だよ。でもおまえが俺を倒すまで何回でも壁になってやる」と、かつての弟分に約束した。

史上最多の28人が出場した団体創設50周年イヤーのG1で、未来を感じさせた。「この俺にかかってこい」と叫んだ7月16日の開幕戦から、33日。160キロ超のファレやジョナ、203センチのアーチャーら、怪物と肌を合わせた。前日17日の準決勝では、昨年のG1で敗れたトンガに雪辱。5歳年上の相手からは「何歳になっても強くなれると改めて見せてくれた」と感じ取った。自身もまだ成長途上。中学卒業後に地元を飛び出し、16歳でメキシコでデビューした少年時代と変わらないプロレス愛がにじんでいた。

ファンがワクワクする戦いを-。そのためにオカダはリアルを追い求める。試合当日のマイクパフォーマンスは事前に用意しない。その時々の言葉が、ファンの心に響くと信じているからだ。この日も、「50周年残りの下半期を盛り上げる。ありがとうしか出てこない」と、涙を浮かべながら魂で叫んだ。

新日本50周年イヤーの顔に返り咲いた。昨年のG1決勝戦から観衆は約3000人増えた。だが、こんなものじゃない。「すぐに始まる新しいシリーズ。1歩ずつ、もっと好きになってもらいたい」。それが王者の使命だ。【勝部晃多】

◆オカダの対オスプレイ戦 これまでの新日本でのシングル対戦成績は5勝1敗で、大きく勝ち越していた。18年の旗揚げ記念日大会、19年のニュージャパンカップ、同年のG1で3連勝。20年10月のG1で初黒星を喫するも、21年1月の東京ドーム大会、22年1月のIWGP世界ヘビー級選手権試合と連勝していた。初対戦は15年のRPW(英国)で、この時も勝利している。