新日本プロレスの永田裕志(54)が、1日に心不全のため、79歳で死去した元プロレスラー、アントニオ猪木さんとの思い出を語った。

この日、新日本のヤングライオンを引き連れ、全日本の3冠ヘビー級王者宮原らと8人タッグマッチに出場。試合勝利後のバックステージで「リングに上がれば、相手だけではなくお客さんとも勝負。(猪木さんから)『いろんな感情をさらけ出して戦え』とずっと言われてきた。僕なりに、どんな強い相手でも、背伸びをしてでも立ち向かわなければいけないと思ってやっていますね」と、胸に秘めるイノキイズムを明かした。

大会前のセレモニーでは猪木さんの遺影を携えて、観客とともに追悼の10カウントをささげた。「身が引き締まる思いでした」。猪木さんとの思い出を振り返ると、怒られた記憶しかないという。「僕にとっては世の中で一番怖い人が猪木さんでした」と苦笑する。だが、最後に会った約3年半前のパーティーで見せてくれた笑顔が忘れられないという。「僕らの顔を見てほほ笑んでくれたのを覚えています」。

歴史を振り返れば簡単な関係ではなかった。01年大みそかの猪木祭に出場も、格闘技ルールに対応できず、ミルコ・クロコップに21秒でKOされた。03年にも自分の意志に反して、格闘技に出場させられ、マットに沈んだ。新日本の「プロレスラー最強神話」が音を立てて崩れるきっかけともいわれる出来事になった。

それでも、猪木さんを助けられたと、今も誇りに感じている。「本当に試合に出られるメンタルではなかったんですけど、試合に出ると言えば猪木さんのメンツが立つ。猪木さんをお助けできる。自分は木っ端みじんに負けましたけど、大役を果たしたと思っています」と胸を張った。

新日本最年長の永田は、今も猪木さんのストロングスタイルが息づいていると確信している。「戦い方や表現の仕方が変わっても、新日本に根付いている。昔のスタイルじゃなくても、相手に対して、世間に対して『絶対に負けない』という気持ちを持ち続けている。僕自身も現役でいるうちは信念を貫いていく」。そう天に誓っていた。