日本プロスポーツ大賞授賞式典が2日、都内のホテルで開催され、ボクシング前4団体統一バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)が大賞を初受賞した。ボクシング界では91年度の元WBC世界バンタム級王者辰吉丈一郎以来、31年ぶり4人目の大賞受賞となった。スーパーバンタム級転向を「挑戦」と設定。WBC、WBO世界同級王者スティーブン・フルトン(28=米国)への挑戦が発表秒読みの井上は、日本プロスポーツ界をけん引する1人としての自覚をみなぎらせた。

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井上が岸田文雄首相から授与された内閣総理大臣杯を右手で高々と掲げた。殊勲賞を受賞した米MLBの大谷翔平(エンゼルス)や日本プロ野球で3冠王を獲得した村上宗隆(ヤクルト)ら有力候補がいた中、世界で史上9人目、アジア初の4団体統一王者となったことを高く評価された。「大変、光栄です。ボクシング界でも自分たちが活躍し、結果を出すことによって盛り上がることはいいこと。結果を求めて突き進んでいきたい」と感慨深げにカップを見つめた。

ボクシング界では、元WBA世界フェザー級王者西城正三(68年度)、元WBA世界ライトフライ級王者具志堅用高(79、80年度)、そして辰吉以来、31年ぶり4人目の大賞となる。井上は「辰吉さん以来ということなのでボクシングに日が当たるという賞をいただけてうれしい」とけん引役としての自覚をみなぎらせた。

1階級上への殴り込みを「自分自身への挑戦」と設定した。世界4階級制覇、世界初となる2階級での4団体統一を狙う井上は「日本プロスポーツ界を引っ張っていく1人として、より熱狂いただける試合をお見せできるよう精進したい」とスポーツ界の「顔」としても戦う決意をのぞかせた。5月開催でWBC、WBO世界スーパーバンタム級王者フルトンへの挑戦が発表秒読み段階。「あと少しで発表もできると思う。発表されたら気持ちを切り替えてやっていけたら」と気持ちを引き締めていた。【藤中栄二】

○…車いすテニスの第一人者、国枝氏が殊勲賞とNHK賞を受賞した。1月22日に自身のSNSで引退を表明。2月7日の会見から約1カ月がたったが、この期間は車いすバスケや水泳など他のスポーツを楽しんでいるという。野球が大好きだと語り、WBCに臨む日本代表に向けて「日本を盛り上げてくれている。応援するのを楽しみにしている」と笑顔で語った。

○…サッカー日本代表の森保監督が特別賞を受賞した。式典に出席した井上、国枝氏とも話をする機会があったといい「2人とも突き抜けた個を磨いてきた」と刺激を受けた様子。サッカーは団体競技だが「個の大きさを磨いた上で、和の力を。サッカーに生かしたい」と話した。常日頃から選手個々の成長が重要だと口にする。指揮官にとって、世界の頂点の景色を見た2人は目指すべき存在に映ったようだ。