プロボクシング元女子世界5階級制覇王者・藤岡奈穂子(47=竹原慎二&畑山隆則)が29日、現役引退を表明した。

同日、東京・大田区の所属ジムで竹原慎二会長、柴田貴之マネジャーとともに会見し「引退ということですが、卒業ではないかなと。やり切りました」と引退する意思を口にした。昨年4月、米サンアントニオでマーレン・エスパーザ(米国)とのWBA、WBC世界ミニマム級王座統一戦に臨み判定負けしたのがラストマッチだった。

藤岡は「負けたら引退と決めていましたが、試合後に(米プロモート大手)ゴールデンボーイ・プロモーションの副社長から『もう1度、呼ぶ』と言われて揺れる自分がいて(1度は)再起を選びました」と昨年7月から約3カ月ほど米国でトレーニングを積んでいた。しかし条件面などで試合成立までいかず「自分の中で期限を決め、1年間やって何もなければ引き際かなと。やることはやったと思います」と引退を決意する経緯を説明した。

今後については何も決めていないものの、故郷の宮城・大崎市への恩返しや後進の指導に興味を持っているという。現時点で地元に戻る予定はなく「2拠点でも3拠点でも必要と言われればいきたい」と意欲満々。所属ジムの竹原会長は「よく今まで頑張ってくれた。ジムでは女子選手ながら見習う点も多く、男子選手の手本にもなり、リーダーシップをとってくれた。頑張り屋さんで自分から率先してやるタイプだった。2年前に政治家になったらと勧めましたが本人にその気はないみたいです」と秘話も明かした。

ソフトボールの実業団に所属していた藤岡は09年6月にプロデビュー。11月3月の東日本大震災で世界初挑戦が延期となって故郷も被災しながらも同5月、WBC女子世界ミニマム級王座を獲得し、故郷を勇気づけた。13年にWBA女子世界スーパーフライ級王者山口直子に勝利し2階級制覇に成功。15年にはWBO女子世界バンタム級王座を決定戦で奪取して3階級制覇、17年にはWBA女子世界フライ級王座を決定戦で制して4階級制覇、そして同年12月、WBO世界ライトフライ級王座を決定戦で勝ち取り、男女通じて日本初の5階級制覇を成し遂げていた。