昭和のプロレスで大活躍した日本人プロレスラー、キラー・カーンこと小沢正志さんが29日に亡くなったことが30日、分かった。76歳だった。

関係者によると、前夜の午後8時30分ごろ、東京・西新宿で経営する「カンちゃんの人情酒場」の営業中に倒れた。カウンター席に腕を組んで座ったまま意識を失ったという。

店には数人の常連客がおり、蘇生措置の後、すぐ救急搬送されたものの意識は戻らず、午後10時4分に息を引き取った。死因は「動脈破裂」だったという。

大相撲の春日野部屋で、しこ名「越錦」として幕下で奮闘。1971年(昭46)にプロレスへ転向した。公称195センチ、140キロの恵まれた体格を武器に、大巨人アンドレ・ザ・ジャイアントの足をも骨折させたラフファイターとして人気を博した。

16年間の活動では、北米で「謎のモンゴル人」として売り出し、悪役レスラーとしてファンも多かった。両手を大きく広げ、左右同時に手刀を撃ち込む必殺技「モンゴリアンチョップ」で多くのレスラーを倒した。コーナーのトップからムササビのように跳躍する、全身バネのようなタフガイだった。

87年の引退後、東京・新大久保に居酒屋「カンちゃん」をオープン。長くスナックとしてもファンらに親しまれたが、新型コロナ禍の世相に嫌気が差して21年5月に閉店。当時、本紙の取材にこう話していた。

「プロレスの時と同じで『辞める』と決めたらスパッと辞める。一緒に戦ったハルク・ホーガンにも現役慰留されたけどさ、プロレスはまだまだできたけどさ、あの世界の人間関係に嫌気がさして引退を決めたんだ。今回も似ているよ」

その後は自身のYouTubeチャンネルでS状結腸がんを患っていたことを報告するなどしていたが、心機一転、今年3月6日の誕生日に西新宿で「カンちゃんの人情酒場」をオープンしたばかりだった。血管系の持病はなかったという。亡くなる約5時間前には、飲食店のX(旧ツイッター)に元気な姿を投稿していた。

通夜、葬儀・告別式は近日中に近親者だけで執り行う。後日、お別れの会の開催を検討する。その名を冠した店は、閉店する意向という。

◆キラー・カーン 1947年(昭22)3月6日生まれ、新潟出身。本名は小沢正志。71年に大相撲からプロレスラーに転身し日本プロレス入団。73年3月、坂口らとともに新日本へ。76年に海外遠征に出発し、「テムジン・モンゴル」の名で暴れる。キラー・カーンに改名後、81年にアンドレ・ザ・ジャイアントの足を骨折させて、その名を全米にとどろかせる。82年3月の第5回MSGシリーズでがい旋し、宿敵アンドレと優勝を争った。その後ジャパン・プロレスに移籍も、87年の分裂を機に引退。その後は、芸能活動のかたわらスナックなど飲食店を経営していた。