「リアル」ネリがやってきた。5月6日、東京ドームで4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(31=大橋)に挑むWBC世界同級1位ルイス・ネリ(29=メキシコ)が21日、来日した。

母国ではなく、米国で調整し、元WBC世界バンタム級王者山中慎介との2度の対戦を通じて懸念されたドーピング検査もパスし、減量面でもWBC規定の事前計量をクリア。3月6日の来日時は優等生発言が多かったが、今回は自信たっぷりにKO宣言した。

夫人、3人の娘らと来日したネリは確かな自信を胸に秘めていた。約2週間後に迫った井上への挑戦に向け、KO撃破を宣言。メガネ姿でインテリ風なムードを漂わせながら「今の状態はパワフルだ。5カ月間、しっかり練習してきた。本当のネリは、井上をリスペクトしているが、恐れてはいない。KOする」と元世界2階級王者らしくオーラを漂わせた。

ほぼ母国メキシコに戻ることなく、米テキサス州エルパソを拠点にトレーニングを積んだ。17年8月、山中からWBC世界バンタム級王座を獲得後、ドーピング違反が発覚。さらに18年3月の山中との再戦前日には体重超過で王座を剥奪された経緯がある。今回はVADA(ボランティア・アンチドーピング機構)による抜き打ち検査をパスしてきた。

さらにWBC規定の試合30日前(リミット55・3キロの10%以内)、同15日前(同5%以内)の事前計量もパスしてきた手応えもある。現在の自身のウエートについてネリは「今は128ポンド(約58・05キロ)ぐらいかな。今回の移動で少し増えたかもしれないが、それほど上がっていないと思う」と減量面の不安を払拭(ふっしょく)するように強調した。

3月の来日時、山中や日本ボクシングファン、関係者に謝罪した。「優等生」発言をしていたが、調整に相当な自信がある様子。強気の発言が続き「井上は良いボクサー。スピードがあり、パワフルで才能があると思うが、自分が井上よりも勝っている」。山中戦当時は「悪童」とも言われたネリはリアルモードだ。【藤中栄二】

◆ネリと日本ボクシング界 ネリは17年8月、WBC世界バンタム級王者山中慎介から王座獲得後、ドーピング違反が発覚した。続く18年3月の再戦では前日計量で体重超過。JBCから当時の「永久追放」となる無期限の国内活動停止処分を受けた。JBC規定改定で処分開始日から無期限は3年経過すれば再申請可能となったことを受け、ネリ本人と陣営、指名挑戦者に選んだWBCが謝罪を含めた資格回復の書面を今年2月に提出。同月下旬には約6年ぶりに資格回復したが、ネリは米メディアのインタビューで「JBCの処分や注意は、気にもとめていなかった。日本の人々が私が井上と戦うともうかると判断し、処分を解除した」などと発言した。