WBC世界スーパーバンタム級2位の西岡利晃(32=帝拳)が、恩人の期待に応え、世界の頂点に立つ。異色画家で交流のある山本集氏(68)から10日、縁起のいい赤富士の絵と「捨身」「死闘」の色紙を贈られた。昨年、悪性のぼうこうがんを克服した山本氏のこん身の作品。同氏の作品で引退を回避したこともある西岡は悲願達成を誓った。またこの日、暫定王座決定戦(15日、パシフィコ横浜)で対戦するナパーポン(29=タイ)の公開練習が行われた。

 最高のプレゼントだ。西岡は、画家の山本氏から縁起がいいといわれる赤富士の絵と「捨身」「死闘」の言葉を贈られた。「本当に励みになります。毎日見て、勇気をもらいます」と笑顔を見せた。5度目の世界戦となるナパーポン戦。ボクシング人生を懸けた一戦を前に、これ以上ない勇気を与えられた。

 もともと山本氏の絵画作品のファンで、知人を通して交流を続けてきた。04年3月、4度目の世界挑戦に失敗した時も、山本氏から贈られた作品に救われた。「この道より生きる道なし」と書かれた色紙。何度もあきらめそうになったが、自宅の居間に飾った、その言葉を見て「自分にはボクシングしかない」と再挑戦を決意。4年半もチャンスを待って、今回の5度目の世界戦につなげた。

 今回贈られた色紙の「捨身」「死闘」にも深い意味が込められている。山本氏は昨年11月、悪性のぼうこうがんを患った。12時間の手術を受けた末に生還。現在は再起し、画家として活動を続ける。山本氏からは「がんという病気も、天が与えてくれた男になるチャンス。いつどこで、どうなるかわからない身だが、絵筆を握って死ねたら本望。西岡くんも1回きりの人生、捨て身になって、命懸けの勝負をしてもらいたい」とエールを送られた。

 この日、対戦相手のナパーポンが、所属の帝拳ジムで公開練習をした。トレーナーで過去4度の挑戦も退けられた元世界王者ウィラポンともニアミスしたが、集中力を乱されることはなかった。西岡は「今までで一番調子がいい。捨て身の死闘で山本さんの期待に応えたい」と必勝を誓った。【田口潤】