<K-1甲子園:62キロ級FINAL16>◇10日◇東京・代々木第2体育館

 ノブさん、やりました。キックボクシング60戦無敗の石田勝希(初芝立命館2年)が園田顕悟(門川3年)を2回30秒TKOで下した。今年1月に白血病で入院し、7月に退院したK-1ファイター、ノブ・ハヤシ(31=ドージョーチャクリキ・ジャパン)の指導を昨夏受けて「あこがれの存在」と目指してきた。この日に観戦したノブに成長した姿を披露。2連覇へ白星発進したHIROYA(セントジョーンズインターナショナル2年)打倒の一番手に、ノブの“愛弟子”が名乗りをあげた。

 勝利の瞬間、石田は右こぶしをリングサイドのノブに向かって突き上げた。2回、右パンチからのラッシュで相手が負傷しドクターストップでTKO勝利。見守ったノブは「(完勝は)予定通りですよ。うれしかったです」と自分のことのように喜び、石田は「勝てて良かった」とはにかんだ。

 ちょうど1年前に2日間、石田はノブの指導を受けた。ミット打ちを受けてもらい「ノブさんみたいになりたい」と感激した矢先の今年1月、ノブが白血病で倒れた。「ショックが大きかった」。だが、逃げずに闘病生活を送る様子を聞き「あきらめず(病に)打ち勝っている。やっぱりすごい」と、さらに刺激を受けた。

 だからこそ、石田もすべてに打ち勝とうとしてきた。大会直前の7月26日から5日間、高校の勉強合宿が行われた。最後の追い込みをしたい時に1日10時間の猛勉強。だが休憩ごとに部屋で自主練習を繰り返し、練習時間を確保した。学年トップクラスの学力を持ち、関西の有名私立大進学を目指す石田は、この日の試合でも「ガンガン行くんだぞ」とのノブの助言通り、攻めた。ノブが命をかけて実践する「前へ前へ」のチャクリキ魂は、石田にも継承されていた。

 10月26日のFINAL8(横浜アリーナ)進出を決めた。そこでも勝ち抜き「ノブさんを(大みそか)『Dynamite!!』につれていきたい。王者は夢ではないと思う」。中学からの無敗を守り、谷川EPを「強かったね~」とうならせたノブの「愛弟子」は堂々、初出場初優勝を宣言していた。【浜本卓也】