現役助産師で、WBC女子世界ライトフライ級王者の富樫直美(36=ワタナベ)が6月23日、メキシコで同級1位エスメラルダ・モレノ(メキシコ)と8度目の防衛戦を行うことが30日、決まった。陣営は試合後、WBCに史上初の「産休王者」を申請する計画を明かした。

 助産師として500人以上の子供を取り上げ、誕生の喜びを誰よりも味わってきた。ここ数年は「結婚」「出産」を年頭の目標に掲げる。1月には6歳下のAKB前田敦子似の会社員と結婚。もう1つの目標を達成するため、モレノ戦後からは子づくりを解禁する予定だ。

 陣営は出産後の現役続行を後押しする。ワタナベジムの渡辺均会長(62)は「試合までは禁欲でボクシングに集中。試合後は思う存分、子づくりに励んでほしい」と話した。陣営としては、ケガでも地位が確保される休養王者の女子版として「産休王者」を日本ボクシングコミッション(JBC)を通じてWBCに申請する。

 WBCも女子の環境づくりには力を入れている。世界的に「産休王者」の例はないが、JBC関係者によると認定される可能性は高いという。渡辺会長は「10カ月の妊娠期間を考えれば、最低1年半の地位保全を求めたい」と続けた。

 世界王者、助産師、妻、母の4足のわらじを履くためにも、最強挑戦者モレノを倒すしかない。富樫は「結婚して弱くなったと思われたくないから」ときっぱり。「産休王者」を経て「ママでも世界王者」を実現する。【田口潤】

 ◆富樫直美(とがし・なおみ)1975年(昭50)7月31日、東京都大田区生まれ。96年に看護師免許を取得し、米国留学後の01年に助産師免許取得。02年にボクシングを始め、05年全日本ピン級(46キロ以下)07年同ライトフライ級優勝。アマ戦績16勝(8KO)4敗。08年JBCプロテスト合格。同7月に韓国でWBC世界ライトフライ級暫定王座を獲得。昨年11月には日本人最多防衛記録を更新する7度目の防衛。159センチの右ボクサーファイター。