元WBC世界バンタム級王者辰吉丈一郎(43)の次男寿以輝(じゅいき、16)が、プロボクサーになることが1日、分かった。8月3日にプロテスト受験が可能な17歳になる。父と同じ大阪帝拳ジムから今冬以降にプロテストを受ける見通し。寿以輝は1月から同ジムで練習。ジム側からデビューの条件として半年間で20キロの減量を提示された。85キロの体重を6月末までに64・1キロまで落としてクリア。今後は本格的にボクサーとして歩み出す。

 そげ落ちたほおが、16歳の本気度を表した。「浪速のジョー」の次男、辰吉寿以輝が、希代のカリスマボクサー丈一郎と同じプロボクサーの道を歩む。

 「強いボクサーになりたい。目標は世界王者になること。(父の存在は)別にプレッシャーになってない。オレはオレなので」

 最初の記憶は、97年11月22日の辰吉-シリモンコン戦。父は圧倒的不利の予想を覆して、代名詞の左ボディーで3度目の戴冠を果たした。当時1歳の寿以輝は父とリングに上がった。小学2年から父、兄寿希也さんと一緒に大阪帝拳ジムに通った。「そのころにはもうプロになろうと思っていた」。昨年3月に中学校を卒業。高校には進学せずに単身、上京し、ボクサーになろうとした。さすがに周囲に止められ、一時期は父と同じ大阪・守口市内のアマチュアジムに通った。そして今年1月にプロデビューを見据えて大阪帝拳ジムに戻った。「名門ですね。小さいころから来ていたし、デビューするなら大阪帝拳と思っていました」と口にした。

 上腕が太く、腕っ節には自信があった。しかし当時は身長167センチで、体重は85キロ。ボクサーよりもラグビー選手のような体格だった。入門テスト代わりのマスボクシング(寸止め)2ラウンドでは練習生の右アッパーがまともに入って鼻から出血。ジム側は、寿以輝の本気度をテストするために、ある条件を出した。

 6月までの半年間で20キロの減量。それまでスパーリングは禁止で、トレーナーの本格的な指導もしない。

 父は、別のジムで練習を積んでいる。寿以輝は、1人で自転車に乗ってジムに通い、1人でサンドバッグを打ち、1人でロープを跳んだ。半年の期限を迎えた6月30日、その引き締まった体は64・1キロだった。

 ジム側のテストをクリアしたことで、今後は本格的にボクサーの道を進む。寿以輝は試合の経験がなく、これからスパーリングを重ねる。支えは父の言葉だ。

 「左を制すものは世界を制す」

 「体を上下左右に動かせ」

 小刻みなステップを踏み、父譲りの左ボディーを打ち込む。「体重はまだ落ちる」と話しており、今冬以降と予想されるプロテストは父と同じバンタム級(53・52キロ)での受験が濃厚だ。「これから経験を積んでいきたい」。16歳が偉大な父と同じ道を歩み始めた。

 ◆辰吉寿以輝(たつよし・じゅいき)1996年(平8)8月3日、大阪・守口市生まれ。幼少期から父丈一郎の手ほどきでボクシングに親しむ。6歳で初めて大阪帝拳ジムを訪れる。寺方小2年でプロを志し、昨年3月に守口第2中学校を卒業。ボクシング以外のスポーツ経験はなし。好きな選手は辰吉丈一郎とマニー・パッキャオ(フィリピン)。家族は父、母、兄の4人。兄寿希也(じゅきや)さんと寿以輝の名前は、99年に亡くなった祖父粂二(くめじ)さんがつけた。身長167センチの右ボクサーファイター。