横綱鶴竜(30=井筒)が、会心の相撲で勝ち越しを決めた。

 鋭い出足で大関稀勢の里(29=田子ノ浦)の上体を起こすと、まわしにこだわらずに一気に前へ。「立ち合いが完璧でした。今場所の中でも、1番だったんじゃないかな」。低い姿勢のまま、土俵外へと吹っ飛ばした。「自分の相撲だけに集中した。それが良かった」と満足そうに振り返った。

 過去14勝28敗と、ダブルスコアで敗れている相手。秋場所は、不成立も含めて立ち合いで2度も変化をし、観客から罵声も浴びた。だが、今回は「思い切って突っ込んで行こうと思った」と、変化する考えはみじんもなかった。腹を決めた相撲が、わずか2秒1の寄り切りにつながった。

 初めて東の正位に位置した今場所は、既に優勝争いの圏外にいる。だが、残り3日間、白鵬と日馬富士の両横綱が演じる優勝争いの鍵を握るのは間違いない。「自分はもう、自分の相撲に集中していく」と誓って会場を後にした。