所要2場所で関取の座を射止め、涙が止まらなかった。

 幕下の優勝が決まる、6戦全勝同士による矢後(23=尾車)-竜勢(31=鏡山)の一番は、立ち合いの攻防から左を深く差した矢後が寄り切りで勝ち、全勝優勝を決めた。

 幕下15枚目以内の7戦全勝で、来場所の新十両昇進を確実にした。

 横綱大乃国(現芝田山親方)と同郷の北海道芽室町出身。埼玉栄高に相撲留学し、大学は中大に進学。4年時の昨年12月の全日本を制し、アマ横綱に就いた。規定により幕下15枚目格付け出しでデビュー。本来なら3月の春場所がデビューとなるが、持病の腰痛が癒えるのと、プロの世界に慣れるため、デビューは1場所遅らせ、5月の夏場所で初土俵を踏んだ。その夏場所は5勝2敗で勝ち越し、番付を上げて今場所に臨んでいた。

 これほどの緊張感を味わったのは「去年のアマチュア選手権(アマ横綱に就いた全日本選手権)と似たような緊張」と言い「悪いことも想像したりして」前夜は眠りにつけなかったという。「ここまで来たら、やるしかない」と覚悟を決めて場所入りしたが、緊張感は解けない。涙を流したのは、やはり昨年の全日本以来で「緊張がとれてホッとした涙です」と話した。

 「先場所は緊張で自分の相撲を取れなかった。今場所は周りもよく見えて、集中できたのが勝ちにつながった」と勝因を分析。関脇御嶽海以来の所要2場所での新十両昇進は「想像していなかった」という。師匠の尾車親方(元大関琴風)も「順調に成長してくれてホッとしています。先場所はぎこちなかったけど、今場所はプロの雰囲気に慣れた」と勝因を挙げた。同じ左四つの横綱稀勢の里を目標に、また一人、スケールの大きな関取が誕生する。