東前頭2枚目の北勝富士(25=八角)は、同3枚目の阿武咲(21=阿武松)に押し出されて4敗目を喫した。それでも、表情は暗くなかった。「立ち合いがはまった。調子のいい阿武咲に、今日はちゃんと当たれた。圧力はしっかり戻ってきている」。思い悩んでいた前日までの悲愴(ひそう)感はなかった。

 「自分の立ち合いができない。何かがずれている。初めてです、こんなの。おかしい」。前日の取組で悩みを吐露していたところ、母校の埼玉栄高の山田道紀監督から電話を受けた。「今は苦しいかもしれないが、三段目や幕下のときと比べたら全然苦しくないだろ。宇良くんとか、出たくても出られない人がいっぱいいる。元気に相撲が取れていることに感謝しなさい。当たり前じゃないんだよ」。

 この言葉に気持ちがリセットできたという。「自分が悩んでいるときに、電話がかかってくる。分かるんですかね」。恩師の言葉でどこか吹っ切れた。相撲には負けたが、立ち合いの踏み込みは戻ってきた。

 「これからっすよ」。まだ前半戦が終わっただけにすぎない。