39歳1カ月のベテラン、西前頭13枚目の安美錦(伊勢ケ浜)が涙の勝ち越しを決めた。東前頭6枚目の千代翔馬を上手出し投げ。昭和以降の幕内では10位の高齢勝ち越しを果たし、取組後は涙を流して喜んだ。さらに、新入幕だった00年名古屋場所以来2度目の敢闘賞も獲得。こちらは40歳2カ月の旭天鵬に次いで史上2位の高齢受賞となった。ほかに三賞は殊勲賞に貴景勝、敢闘賞に隠岐の海、技能賞に北勝富士が輝いた。

 声が震えた。声量はか細く、言葉にも詰まる。タオルを何度も目に当てた。安美錦は泣いていた。千秋楽で決めた勝ち越し。呼ばれたインタビュー室で「幕内で通用するか、しないかという不安もいっぱいあった。連敗すると弱気になるのもいっぱいあった。家族はいつもと変わらずに接してくれて、気を使わせて…。今日はみんなで喜びたい」と思いの丈を打ち明けた。

 無理もなかった。5連勝で始まった昭和以降最年長再入幕の場所が、最後4連敗で追い込まれた。弱気な思いは「頭から離れなかった」。それを乗り越えられたのは家族の支え。妻と娘2人、そして7月に生まれた第3子となる長男丈太郎くんの存在だった。「いつもと変わらず接してくれて、それに応えたいという思いが、こらえきれなくなって出てきちゃった」。これが「記憶にない」という「勝って泣く」姿となった。

 勝ち越して新入幕の00年名古屋場所以来103場所ぶりとなる敢闘賞も手にした。これには「情けをかけてもらったみたいで申し訳ない」と照れた。「力が出なくなったらやめるけど、力が出る限り、やりたいと思います」。力士安美錦の相撲人生は、18年も続く。【今村健人】