2場所連続優勝のかかる関脇栃ノ心(30=春日野)が、白星スタートを切った。平幕の宝富士を得意の右四つに持ち込み、怪力で寄り切った。万全の取り口は、6日の稽古で左脚付け根外側を痛め、東京まで日帰り治療したのがウソのようだ。日本コカ・コーラが出した新規懸賞「働く人を応援する ジョージア」もゲット。2横綱不在の中、今場所も“ジョージアの怪人”が大暴れするか-。

 栃ノ心の全身が、朱に染まる。右おっつけで宝富士の体を起こした。左上手に右下手。得意の右四つになれば、怪力が生きる。グイッグイッと2度つるようにして寄り切った。「今日の白星は力になるんじゃないかな」。笑って話す声のトーンが上がった。

 左脚付け根の外側が「プチッ」と鳴ったのは、5日前。出稽古に来た豪栄道と相撲を取り「うっ…」となった。師匠の春日野親方(元関脇栃乃和歌)は「やっちまったな」と思った。そのまま東京に日帰り治療。かかりつけの整体師に見せ、病院で腰と患部に2本注射を打った。その後は相撲を取れず、ぶっつけ本番で迎えたこの日朝、この世の終わりのような顔で5度「調子良かったのにな…」とこぼしていた。

 「3月11日」も力になったのか。7年前のその日、慰問で栃木の老人ホームにいた。餅つきをして、風呂から上がって、地面が揺れた。「日本の人がいっぱい、大変な目に遭った日だからね」。いい相撲を見せられたことを喜んだ。

 支度部屋で「朝と別人?」と聞かれて「ワッハッハッ! 大きいよ、これ(白星)な」。故郷ジョージアつながりでついたジョージア缶コーヒーの懸賞も、明るさも、強さも取り戻し、2場所連続Vの懸かる春を走りだした。【加藤裕一】