大相撲の春巡業は13日、神奈川・川崎市で行われ、横綱稀勢の里(31=田子ノ浦)は、十両明生(22=立浪)を稽古で指名し、9番取って全勝した。

 得意の左四つに組み止めると、相手に何もさせずに寄り切り、すくい投げなどで地力の差を見せつけた。巡業合流初日となった前日12日は、先場所十両優勝の佐田の海に8勝2敗。差し手争いで譲る場面もあっただけに「昨日の反省を生かす。しっかりと形にこだわっていく」と、左四つからの攻めというテーマを持って臨んでいた。

 稀勢の里は現在、6場所連続休場中で、1月の初場所を途中休場して以来、本場所から遠ざかっている。全休した3月の春場所中には稽古を再開しており、四股やすり足などの基礎運動、若い衆との申し合いなどで調整。関取衆との稽古は前日に再開したばかりとあって、実際に本場所で対戦する幕内上位ではなく、2日続けて十両を指名。その中でも明生を指名したのは「一番いい稽古をしていたから。低いしね」と答えた。若手の勢いを肌で感じたかったのと、低い姿勢から鋭い立ち合いを披露する相手への対応など、相撲勘を取り戻したい考えが根底にある様子だった。

 前日は自身の稽古が終わると、土俵周辺から会場裏手へ引き揚げたが、この日は土俵下に残って四股やすり足を繰り返した。「土俵に尻を向けないのは意味がある。若い衆のころは(土俵脇に立つ)塩持ちするのが、一番いいところで見られるし、強くなると言われていた。(若手の相撲を)参考にしているところもある」と、本場所では対戦しない十両や幕内下位の力士の稽古にも目を光らせていた。