6場所連続休場中の横綱稀勢の里(31=田子ノ浦)が、解説者の北の富士勝昭氏(元横綱)から強烈なダメ出しを受けた。夏場所(13日初日、東京・両国国技館)に向けた横綱審議委員会(横審)による稽古総見が3日、両国国技館で行われ、稀勢の里は三役以上の申し合いで3勝5敗。北の富士氏から「あれでは無理だろう」「間に合わない」などと酷評され、復活に暗雲が漂い始めた。

 稀勢の里はいら立っていた。関脇栃ノ心には力比べで勝てず寄り切られ、横綱鶴竜にはスピードで劣り、突き落とされた。「あー、クソッ」とさけび、会場のファンを沸かせるどころか、静まり返らせた。

 そんな姿に、土俵脇で見守った北の富士氏は開口一番「出るのかあれで?」と、夏場所出場に疑問符を付けた。続けて「あれでは無理だろう。出るなら、あんな稽古では間に合わない。腰も高い。あと1週間、みっちりやっても足りない」と明言した。

 稀勢の里は1日から本格的な稽古を再開し、部屋では大関高安を2日合計で18勝2敗と圧倒していた。その良いイメージもあったためか、この日の稽古後は「課題も見つかった。いい稽古でした」と、復活の手応えも口にした。

 だが北の富士氏は「全然良くなっていない。休場慣れしてしまうとダメ。出るなら『死中に活』。イチかバチかのリスクをかけないと」。絶体絶命の状況から、わずかな生き残りの道を探る「死中に活を求める」という、ことわざまで用いて厳しく言った。

 師匠として2人の横綱を育てた元横綱の指摘は厳しいが、稀勢の里は「ここから1週間ちょっと。大事な1週間だと思っている」。稽古後は覚悟を決めたように、自分に言い聞かせていた。【高田文太】