幕内優勝争いを演じたベテランが、再び大銀杏(おおいちょう)を結う大チャンスを迎えた。関脇経験者で西幕下筆頭の豊ノ島(35=時津風)が、今場所の1番相撲に登場。東幕下筆頭の希善龍(33=木瀬)を突き出しで破り白星発進した。

圧力が戻ってきた。立ち合い、左胸からガツンと当たっただけで、相手が後退した。のけ反りながら時計回りに何とか回り込もうとする希善龍を、なおも冷静に押し込み、最後は左脇あたりを押し込んで土俵外へ飛ばした。

2年前の7月、名古屋場所前の稽古で左アキレス腱(けん)を皮下断裂。無給の幕下生活も丸2年、12場所目を迎えた。一時は番付を35枚目まで下げたが、そこから6勝1敗、5勝2敗、5勝2敗と3場所連続勝ち越し。幕下では最上位の番付で今場所を迎えた。

会心の相撲に「初日に、いい波を作れるような相撲を取れるといいな、と思っていたけど、その思うような相撲を取れた」と振り返った。直前の相撲で、やはり関取復帰を目指す東幕下3枚目の豊響(33=境川)が会心の押し相撲で勝ったことも「目の前でいい相撲を取っていたから手本にしようと思っていた」と刺激にしていたようだ。

過去2度の幕下上位(5枚目まで)の場所は、いずれも場所直前や場所中のケガで大きな負け越しを余儀なくされていた。そんな苦い経験も踏まえ、万全を期して場所を迎えた。この番付なら、4番勝って勝ち越せば再十両が濃厚になる。ただ、そんな小さなことは考えず「せっかくここまできて(関取に)戻れるチャンス」と意識しつつも「7番勝って気持ちよく戻りたい」と1番1番の白星の積み重ねを目指す。「(関取に)戻ったことを想像すると涙が出てくる」と言ってすぐに、その言葉を打ち消すように「想像でなく現実にしたい。(幕下上位の番付で)ここまで戻ってきた、と思っちゃ駄目」と自分に言い聞かせるように話した。