史上20組目の兄弟関取が誕生した。日本相撲協会は30日、東京・両国国技館で春場所(3月10日、エディオンアリーナ大阪)の番付編成会議を開き、若元春(25=荒汐)の新十両を決めた。

荒汐部屋「大波3兄弟」の次男で、三男の若隆景(24)に続く昇進。新十両は他に霧馬山(22=陸奥)、再十両に大成道(26=木瀬)、貴ノ富士(21=千賀ノ浦)が決まった。

喜びより安心感がにじみ出た。東京・中央区の荒汐部屋で行われた会見。若元春は「長い間皆さんに期待してもらった分、待たせてしまった」と打ち明けた。11年九州場所の初土俵から約7年。入門2年目に幕下優勝を果たしたが、そこから時間がかかった。「甘かった。すぐに(十両に)上がれるだろうとテングになっていた」。幕下上位で足踏みし、師匠の荒汐親方(元小結大豊)も「ここ3、4年は稽古に身が入っていなかった」と振り返る。出稽古に来た他部屋の親方にも「もったいない」「もっと稽古をすれば」と言われる始末だった。

手をさしのべたのは同部屋の蒼国来(35)だった。場所前の正月前後、若元春を呼び出してハッパを掛けた。「もっと自分のことを考えろ」。尊敬する兄弟子の言葉を受け奮起。師匠も「姿勢が変わった」と目を見張る場所前の稽古で、左おっつけと鋭い出足に磨きがかかった。

3兄弟の夢にまた1歩近づいた。兄は幕下若隆元、弟は十両若隆景。祖父は元小結若葉山という相撲一家だ。「(先に昇進した)弟に負けたくない気持ちがあった。3人で上がるのが理想」と、兄弟の絆は強い。

対戦したい力士がいる。平幕阿炎とは年齢も近く、親交がある。新十両を確実にした場所中の夜、カラオケでケツメイシの「仲間」を熱唱され、感動のあまり号泣した。「『待ってるぞ』と言われていた。早く追いつきたい」。阿炎が待つのは幕内。十両を早々と突破する気概だ。【佐藤礼征】