大相撲春場所の初日を2日後に控えた8日、会場となる大阪市のエディオンアリーナ大阪に“珍客”が現れた。

午後7時半ごろ、外から迷い込んだ茶色と白の中型犬が、会場内のさまざまな部屋を転々と動き回った後、報道陣の控室の隅に居座った。犬には首輪が付けられているがリードはない。極度の興奮状態からか、片隅に居座る前には、部屋の中央にふんをしており、その後は眼光鋭く、しばらく舌を出して威嚇するような表情を見せた。報道陣の要請で駆けつけた会場職員が捕獲を試みると、ほえたり、かみつこうとするなど手に負えない状態に。ついには大阪府警が出動する事態となった。

大阪府警の男女各1人は「よーし、よしっ」などと声を出し、手なずけようとしたが、犬はいっこうに警戒態勢を緩めようとしなかった。警察も手に負えない状況となり、カメラを取り出して顔写真を撮影。その後、行方不明として届けられている犬と照合しないか調べ始めた。

すると、警察に“捜索願”の届けが出ていたため、飼い主とされる人物に連絡したところ合致した。犬は4歳オスで「ジョン」と名付けられていたことが判明した。記者控室に迷い込んでから約1時間後、現れた飼い主の女性が「ジョン!」と名前を呼ぶと、それまでの警戒態勢を一気に崩し、犬も飼い主のもとにゆっくりと近づき、ほおずりした。

実はジョン、岡山から大阪にやってきた後に、親戚の男の子が誤って逃がしてしまい、そのまま行方不明となっていたという。女性が涙ながらに引き揚げようとすると、大阪府警から「ちょっと書類をお願いします」と言われ、手続きに向かった。報道各社も、締め切り時間を終えて原稿を出し終えて落ち着いたのか、一斉に「よかった、よかった」と、拍手を送っていた。