日本相撲協会は29日、名古屋場所(7月7日初日、ドルフィンズアリーナ)の番付編成会議を開き、岩内町出身の一山本(本名・山本大生、25=二所ノ関)の新十両昇進を決めた。中大時代に全国学生相撲選手権16強など実績を残し、16年3月の卒業後に就職した地元北海道の福島町役場を退職。年齢緩和制限を利用して、17年1月の新弟子検査に合格した。脱サラして関取の座をつかんだ25歳は「ようやくスタートラインに立った。これからしっかり稽古して頑張りたい」と、満面の笑みを見せた。

身長187センチ、体重130キロと細身ながら突っ張り相撲が武器。師匠の二所ノ関親方(元大関若嶋津)は「前に出る力がある。もう少し太れば(将来的に)三役になれる」と太鼓判を押した。課題は食の細さ。茶わん2杯程度で腹が膨れてしまうが、関取昇進にあたり「これからは4、5杯は食べられるようにしたい」と増量プランを明かした。

刺激は同じ北海道出身で大学の1学年後輩でもある前頭矢後や、学生相撲出身で同学年の朝乃山、十両豊山の存在だ。「(夏場所で初優勝した朝乃山とは)オフのときに食事に行く仲。優勝決まって悔しさもあったが、いつかは対戦したい」と、先を行くライバルを追いかける。

役場勤務の時はスーツを身にまとい事務手続きなどをこなしていたが、2年余りの月日を経て華麗なる転身を果たした。「社会人時代は地元の子どもたちに相撲を指導して『引かずに前に出ろ』と言っていたので、前に出る相撲を見せたい」。少年たちの夢も背負い、名古屋で勝ち越しを目指す。【佐藤礼征】

◆一山本(いちやまもと)本名・山本大生。1993年(平5)10月1日、岩内町生まれ。小学2年から相撲を始め、大野農高では3年時に国体道予選優勝。中大を経て福島町役場に勤務した社会人1年目の16年国体個人戦ベスト16。16年9月の年齢緩和制限適用第1号の力士として同年12月に二所ノ関部屋に入門し、17年初場所初土俵。同年春場所で序ノ口優勝。