関脇貴景勝(23=千賀ノ浦)が、大関返り咲きへ吉兆だ。前頭碧山を押し出して初日から2連勝。右膝の負傷による休場から、再出場した夏場所8日目で敗れた相手に完勝した。現行のかど番制度となった69年名古屋場所以降、1場所で復帰した5人6例ではいずれも連勝発進に成功。データに後押しされながら10勝以上を目指す。2場所連続優勝を狙う鶴竜も連勝発進。横綱白鵬がこの日から休場した。

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199キロの巨体を、ひたすら追いかけ回した。もろ手突きで出足を止められたが、貴景勝は二の矢、三の矢を素早く繰り出す。足を止めず、下からあてがうように懐へ。貴景勝の圧力に後退する碧山を、逃さずに仕留めた。「(相手が)引いたら攻め込んでいく、そういう意識だった」。格の違いを見せつけたが、相撲内容の良しあしについて問われると「それは皆さんが決めること。自分で決めることじゃない」と、無粋な自己評価を嫌った。

因縁のある相手だった。碧山とは再出場した夏場所8日目で対戦。変化であっけなく敗れ、大関として異例の再休場に追いやられた。そして今場所前に行われた先月31日の横綱審議委員会(横審)による稽古総見。「けがした日から1日も忘れず、早くやりたいと思っていた。特別な感情があるわけじゃないが、手っ取り早くその相手とやった方がいい」と、申し合いで真っ先に指名して、電車道で完勝。頭に引っかかる要素はすぐに取り除いた。

大関返り咲きへ光明が差す。現行のかど番制度となった69年の名古屋場所以降、大関から陥落した場所に出場して、連勝発進に成功した例は7人8例。そのうち6例は復帰に成功しており、確率にして75%とムードは高まる。「自分のやるべきことをやれば勝てる確率は上がる。一生懸命やれていると思う」。場所前には10勝どころか優勝を目標に掲げた。横綱白鵬が2日目から休場するなど大荒れ模様の今場所。完全復活を目指す23歳にも、そのチャンスは十分ある。【佐藤礼征】