ケガに泣いた男が、どん底からの復活優勝を果たした。2人に絞られた序ノ口の6戦全勝同士の対戦で、東27枚目の村田(25=高砂、本名・村田亮、三重県志摩市出身)が同30枚目の大村(20=陸奥)を、電車道の一方的な相撲で押し出して、初の各段優勝を決めた。

東洋大時代の実績から17年春場所、三段目最下位格(100枚目)付け出しで初土俵。1年半後の昨年名古屋場所では、関取目前の西幕下筆頭まで番付を上げた。だが、その3番相撲で現十両の一山本(二所ノ関)に敗れた際、右膝を負傷。内側側副靱帯(じんたい)の断裂し手術を余儀なくされた。その後の3場所を全休し序二段で土俵復帰した今年春場所では、2番相撲で今度は左膝を負傷。金沢市立高1、3年時にも負傷したところで部分断裂を負った。5月の夏場所は全休、番付を自身最下位の東序ノ口26枚目まで下げた7月の名古屋場所は1番だけ取って今場所に臨んでいた。

関取目前のケガに失意は大きかっただろうが「十両に上がれる、上がれないというより、ケガをしたことの方が悔しかった。ケガせず負け越しても次にチャンスがあったから。膝は過去にも左をやっているし、ケガをしてしまったのは自分の弱さ。焦っても体はついてこないから、慌てずに」と自分に言い聞かせる日々だった。

高校、大学時代にしのぎを削った友風、炎鵬は幕内で活躍し、東洋大時代に主将、副主将の間柄だった十両若隆景も関取になって15日間、取っている。その活躍も「同級生や小さい頃からのライバルも活躍している。部屋でも朝乃山関が幕内優勝したりして刺激になっています」という。「その人たちに追いつけるように、でも焦らず頑張りたい」。もう、これ以上のどん底はない。そんな気概を胸に、まずは幕下復帰を当面の目標に復帰ロードを歩む。