白鵬からすれば、二本差された感覚などなかっただろう。

外四つになった、のではなく得意の左上手を取って、攻めのパターンに持ち込んだとさえ思ったはずだ。同時に上手は攻めだけではない、相手の下手を殺すためにあるという理詰めの相撲も実践した。うまく下半身を使い右を絞りながら寄りたてる厳しい相撲だった。土俵の中だけの強さではない。おそらくどう取れば相手は嫌がるか、取りにくいかとシミュレーションしているはず。体力的には晩年を迎えているが、経験値の高さで積み重ねてきた引き出しの中から、いろいろ取りだしている。12日目からの役力士との対戦にも1番1番、研究して臨むだろう。調子を上げてきた貴景勝に期待が持てるが、取りこぼしとなるとどうだろう。前半からはまっている白鵬の優勝パターンは崩れそうもない。(高砂浦五郎=元大関朝潮・日刊スポーツ評論家)