“お久しぶり対決”で東十両13枚目の千代鳳(27=九重)が、同12枚目照ノ富士(28=伊勢ケ浜)に押し出しで敗れ、17年秋場所12日目(旭大星戦)以来の関取白星はお預けとなった。

相手は大関経験者で、けがなどから序二段まで陥落後、10場所ぶりに再十両に上がった照ノ富士。自分も小結経験がありながらケガで三段目まで陥落。丸2年間の幕下以下生活を経て13場所ぶりに関取復帰を果たした。

十両序盤の取組とは思えないほどの大歓声を受けての土俵。土俵入りなど、幕下以下とは準備も心構えも違う。「今日は稽古が終わって、大銀杏(おおいちょう)を結って、はかまを着て土俵入りして、塩も巻いたりしていると『(十両に)戻ってきたな』と思った」と特別な感慨があった。

その感慨深さが、相撲では“邪念”となってしまったか。「(相手を)はじくか、中にグッと入りたいなと思ったけど、当たった瞬間、いいところをやられて(抱えられて)しまった」。両腕を抱えられながら照ノ富士の圧力にズルズル後退。最後は右のノド輪で押し込まれ土俵を割った。きめられた両腕を、思わず自分から抜いた場面は「(相手の)力がすごいっす。(腕を)抜かなかったら折れてる」と大関経験者の腕力に脱帽の体だった。

それでも今場所からは15番、相撲が取れる。1場所7番の幕下以下とは、番付の昇降に影響する1番の重みも違ってくる。「今日で時間の使い方(もリズム)も分かってきた。余裕をもってアップも出来る。関取は7回まで負けられると思えば『次に勝てばいい』という気持ちになれる。幕下以下の時は3番負けたら後がないけど、それに比べればリラックスできる」と頭の中は、プラス思考であふれる。ほとんどの力士が場所ごとの目標に「勝ち越し」を掲げるが、千代鳳は「今場所の最初の目標は7番勝つこと。気合で行きます」。ケガの怖さは体に染みこんでいる。無理強いはしない。来場所の十両キープに必要な最低限の星数をターゲットに残り14番の土俵に臨む。