新入幕の東前頭18枚目琴ノ若(22=佐渡ケ嶽)が、1敗の千代大龍を突き出し、2敗を守って中日を終えた。元横綱琴桜の孫で、師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)の長男。祖父も父も達成できなかった新入幕での勝ち越しへ、幕内最年少のサラブレッドが好成績で前半戦を折り返した。横綱白鵬が無傷の8連勝で勝ち越しを決め、隆の勝、碧山の平幕2人が1敗をキープした。

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「親子3代」での幕内力士として注目を集めるホープが、無観客開催の場所で存在感を放っている。琴ノ若は馬力のある千代大龍の圧力に耐え、相手の突きを下からあてがいながら愚直に前へ出た。「流れ良く相撲を取れた。圧力をしっかり伝えられた」。

祖父に「猛牛」の異名を取った元横綱琴桜を持ち、元関脇でしこ名を継承した父が現師匠だ。将来的な目標は大関以上の昇進を前提とした祖父の「琴桜」襲名。期待が膨らむ大器は、祖父と父が果たせなかった新入幕場所での勝ち越しまであと2勝としたが「星は意識していない。今考えても仕方ない」と、どっしり構える。

埼玉栄高で1学年先輩だった大関貴景勝と同様、感情を表に出さない硬派な力士だ。師匠は「性格は先代の師匠(琴桜)、相撲は私」と説明。188センチ、170キロの恵まれた体格は師匠譲りだ。昨年7月の新十両昇進から体重が15キロ増加。琴ノ若は「意識をしなくても(後援会などの)食事会で増えた。まわしが足りなくなりましたね」と“育ち盛り”をアピールする。

周囲も可能性を感じる逸材だ。取組を見守った八角理事長(元横綱北勝海)は「はつらつとしている。こういう新入幕がいっぱい出てくるといい」と期待。対戦した千代大龍は「かち上げにいったけど柔らかくて芯を捉えられなかった。白鵬関みたいな感じ。白鵬関に失礼だけど、白鵬関の次くらいに、当たっても押し込めない」と、最強横綱を引き合いに出して、横綱のDNAを継ぐ琴ノ若を絶賛した。

無観客開催で土俵が独特の雰囲気に包まれるが、琴ノ若は「いい経験をさせてもらっている」と前向きだ。「逆にあまり考えず、思い切ってやれている」。環境に左右されない大器が、後半戦も盛り上げる。【佐藤礼征】

◆琴ノ若傑太(ことのわか・まさひろ)本名・鎌谷将且。1997年(平9)11月19日、千葉県松戸市生まれ。元横綱琴桜の長女、真千子さんと現佐渡ケ嶽親方の長男として生まれる。5歳から相撲を始め、埼玉栄高では主将として高校総体団体優勝。15年九州場所で初土俵。16年初場所で序ノ口優勝を果たし、所要4場所で幕下昇進。19年名古屋場所新十両。家族は両親。血液型はAB型。得意は押し、寄り。しこ名の下の名は、祖父の「傑将(まさかつ)」から1字もらった。