関脇正代(28=時津風)が「混沌(こんとん)の千秋楽」に持ち込んだ。単独トップだった元大関の照ノ富士を寄り切り、自身も初優勝の可能性をつないだ。同じ関脇の御嶽海も3敗を守り、結びで大関朝乃山が照強に敗れる波乱で4人が優勝争いに残った。正代か御嶽海が優勝すれば、13日目終了時点でトップとの2差を覆す史上初の大逆転劇となる。

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結果的に勝っていれば照強の援護射撃で優勝が決まっていた照ノ富士だが、正代の圧力をかけた相撲に屈した。膝の回復は全盛期のころと比べれば戻っていない。劣勢になると粘りきれないが、そこは仕方ないだろう。一方の朝乃山は照強の足取りは頭にあっただろうが、それでも“まさか”という思いだろう。結びの一番で奇襲をかける相撲はめったにないからな。ただ連敗はしたが、新大関としてはよくやっていると思う。両横綱ともう1人の大関が休場して、番付最上位者として責任を託すのは少し酷だと思う。最後は自分らしい相撲で締めればいい。

さて千秋楽。この日は相手を見て取った御嶽海だったが、正代の相撲を目の前で見て照ノ富士には思い切り行けるだろう。勝てば朝乃山-正代の勝者を含めた優勝決定ともえ戦。上位3人が休場したが、両関脇の頑張りもあって千秋楽が面白くなってきた。(高砂浦五郎=元大関朝潮・日刊スポーツ評論家)