元幕内の西幕下5枚目宇良(28=木瀬)が、6勝目をあげて来場所の十両復帰を濃厚にした。

十両の大翔鵬との対戦で、久々に大銀杏を結った。「大銀杏を結っている時点で感慨深かった。久しぶりでうれしかったが、仮の姿なんで」。勝って関取の座を取り戻す。その思いで相手の立ち合い変化にも動じず、低い姿勢のまま一気に前に出て押し出した。

「プレッシャーのかかる一番だったが、力を出せてよかった。この日のために努力してきたところがあるんで。この1番をつかめたのはうれしいですね」

西幕下5枚目の微妙な位置。十両昇進については「意識していない」と繰り返してきたが、この1番だけは違った。「星勘定はしていなかったが、まわりの声は入って『勝ったら上がれるかも』と、その思いでいっぱいだった。勝負どころで力を出し切れてよかった」と声を絞り出した。

「業師」として注目を集め、順調に出世の階段を駆け上がった。最高位は東前頭4枚目。しかし、17年秋場所で膝を痛めて途中休場してから6場所連続休場で三段目まで落ちた。そこからはい上がるが再び膝を負傷し、5場所連続休場で序二段まで落ちた。

「ほんとに長かったですよね」

危ぶまれた再起を果たし、心からの本音がもれた。

まだ稽古ができるまでに膝は回復しておらず、リハビリの日々。能力だけで厳しい世界を再び勝ち抜いてきた。

関取復帰に向け、「15日間、元気な相撲をみなさんに見てほしい」とようやく笑顔を見せた。【実藤健一】