新大関正代(29=時津風)が“九死に一生(勝)”を得た。初顔合わせの若隆景と対戦。もろ差しを許し防戦一方も、土俵伝いに回り込み起死回生の突き落としを決めた。

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勝ちたい、勝たなければいけない。そんな気持ちばかりが先行したような正代の相撲だった。

大関として初めて臨む土俵だから、経験者としてよく分かる。正代の一番の良さである、相手をはじき返すような当たりは影を潜めて受けに回ってしまった。若隆景の善戦に守勢一方だったが、何とか最後は腰の重さと粘り強さで白星を呼び込んだ。この日は土俵入りの後に、優勝額の贈呈式と除幕式もあった。これも初めての経験で、精神的に朝から落ち着かない1日だったんじゃないかな。ただ、決して褒められた相撲ではないが、1つ勝ったのは大きい。2日目からは本来の相撲が取れるだろう。勝って当然、負けて騒がれる。それが大関以上の宿命だ。

初日は出場する力士で番付最上位の大関3人が、そろって白星。休場する横綱2人の存在を忘れさせるぐらいの活躍で優勝争いを引っ張ってほしい。(高砂浦五郎=元大関朝潮・日刊スポーツ評論家)