大関貴景勝(24=常盤山)は今場所後の横綱昇進が絶望的となった。平幕の北勝富士に突き落としで敗れて、初日から3連敗。両横綱の休場などにより高いレベルの優勝が求められる中、自身初の綱とり挑戦は極めて厳しい状況となった。平幕の大栄翔が、正代を破って初日から3日連続で大関を撃破。朝乃山も敗れて3大関が総崩れとなった。

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四つんばいに崩れ落ちた貴景勝は5秒間、顔を上げることができなかった。北勝富士との激しい押し合い。いなしで何度も体勢を立て直すが、相手の左おっつけを我慢できない。支える左足の甲が返った勢いで、左膝が崩れ落ちた。右胸に広がる相手の鼻血が激闘を物語るものの「勝たなきゃ意味がない」。綱とり場所で初日から3連敗。悲願成就は大きく遠ざかった。

横綱昇進をあずかる審判部の伊勢ケ浜審判部長(元横綱旭富士)が場所前に求めていた「高いレベルでの優勝」は、現実的ではなくなった。幕内後半戦の高田川審判長(元関脇安芸乃島)は、この日の内容について「どこでいなそうか考えていたと思う。何も考えずに前に出ればいいのに」と、消極的な取り口に疑問符を打つ。現時点での綱とりの見解については「1日一番ですから。(判断は)トータルで見てみて」と明言は避けた。

狭き門なのは承知の上だった。場所前に貴景勝は「いい経験をできると思っている。みんなが綱とりを経験できるわけでもない」と、重圧の中でも前向きな姿勢を示していた。綱とり初挑戦での昇進は、平成以降では曙、朝青龍、鶴竜とわずか3人。「そんなに甘くない」と、覚悟を決めて臨んでいた。

痛恨の3連敗で場所後の昇進は困難となったが、長い目で見れば、最高位への道は閉ざされたわけではない。3大関では最年少の24歳。苦い経験を糧に、気持ちを切り替える。【佐藤礼征】

▽八角理事長(元横綱北勝海) 貴景勝は張り手1発で決めよう、ではなく冷静に自分の相撲を粘り強く取りきるんだ、という気持ちが大事。勝ちたい気持ちは分かるが空回りしている。3大関には元気を出してほしい。(3連勝の)大栄翔と阿武咲の対戦を乗っている時に見てみたい。変にまとまらず思い切りがいい。

▽幕内後半戦の高田川審判長(元関脇安芸乃島) (貴景勝と北勝富士の一番について)お互い引きもなく気合の入ったいい相撲だった。貴景勝は、どこでいなそうかと考えていたんだと思う。何も考えずに思い切り前に出ればいい。(綱とりについては)1日一番、トータルで見ていく。