西前頭筆頭大栄翔(27=追手風)が、三役以上を総ナメにして単独トップに立った。

関脇隆の勝を押し出し。初日から平幕が三役以上に7連勝するのは、1場所15日制が定着した1949年(昭24)夏場所以降では初の快進撃だ。7日目を終えて平幕が単独首位に立つのは、2019年秋場所の隠岐の海以来。埼玉県出身力士として初めての優勝も現実味を帯びてきた。

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大栄翔の突き押しが、誰にも止められない。立ち合いで勢いよく頭から当たると、隆の勝は1歩も2歩も後ずさり。間髪入れずに左、右、左と3発押し込んで、勝負は決した。過去2勝3敗の相手に、何もさせなかった。「今日も立ち合いがしっかり良かった。本当に内容もいい。力がついてきたんじゃないかなと思っている」。口調は丁寧でも、言葉の端々に自信がみなぎっていた。

両横綱は不在だが、出場している三役以上の力士を総ナメにした。1場所15日制が定着した49年夏場所以降、平幕が初日から三役以上に7連勝するのは初の快挙だ。91年秋場所で当時平幕の若花田(3代目横綱若乃花)が三役以上を総ナメにしたが、当時は東西の関脇に同部屋の貴闘力と貴花田が在位していたため、対戦したのは1横綱、2大関、2小結の5人だった。7人もの役力士を破るのは、異例中の異例だ。

地元の期待が活力になっている。埼玉県出身で賜杯を抱いた力士はいない。出身の朝霞市はツイッターで連日「プッシュだプッシュだ大栄翔!」と、自身の取り口を重ねるようにエールを送ってくれる。「頑張る気力になっている」と大栄翔。朝霞市の有名人といえば「本田美奈子.さん」。同市で生涯の大半を過ごした歌手に、知名度で並ぶ意欲を見せているが「顔じゃないです」。連勝の中でも謙虚な姿勢は崩さない。

中日以降は全員、平幕が相手になる。「(気持ちの変化は)特にない。変わらずやっていく」。1日一番。まずは自身初のストレート給金を目指す。【佐藤礼征】

▽八角理事長(元横綱北勝海) 横綱がいない中、大栄翔(の快進撃)は救世主が現れたという感じ。7日間、全部いい立ち合いだがその中でも今日が一番良かった。当たってすぐの瞬発力、手も伸びたし力を全部出している。貴景勝は開き直っていた感じだった。

<大栄翔>

◆生まれ 1993年(平5)11月10日、埼玉県朝霞市出身。本名・高西勇人。

◆スポーツ歴 朝霞市立朝霞第四小1年時から朝霞相撲錬成道場で相撲を始める。埼玉栄高3年で高校総体団体2位、個人3位。

◆しこ名 初めて番付に載った12年春場所から同年名古屋場所まで「大翔栄」だったが「『栄』の字が最後にくると下半身をけがする」と言われ、本当にけがをしたことをきっかけに「大栄翔」と改名。

◆好きな力士 子どもの頃から元大関千代大海(現九重親方)のファンで、埼玉栄高の先輩、元大関豪栄道(現武隈親方)にもあこがれている。

◆園芸部 中学は相撲道場に通いながら、園芸部に所属。キュウリやナス、ゴーヤーなどを育てた。ヒマワリが好き。

◆サイズ 182センチ、161キロ。