西前頭筆頭の大栄翔(27=追手風)が、悲願の初優勝を果たした。2敗の単独トップで迎えた千秋楽、勝てば優勝の隠岐の海戦を制し、13勝目を挙げると歓喜の瞬間が訪れた。埼玉県勢では初、追手風部屋勢でも初めての優勝を果たした。

両横綱が初日から不在、綱とりが懸かっていた大関貴景勝が不振となった場所で、主役を張った。初日から7日間連続で役力士を破り、三役以上を総ナメ。平幕力士が初日から7日連続で役力士を破るのは、1場所15日制が定着した1949年(昭24)夏場所以降では初の快進撃だった。

9日目に初黒星を喫し、持ち前の突き押しが影を潜める場面もあったが、終盤戦で立て直した。先頭を走る重圧の中でも「いい感じの緊張感でやれている。その中で取るのは大変なことだけど、頑張っていきたい」と前を向いていた。

昨年秋場所には新関脇に昇進するなど、次期大関候補としても期待が高い27歳が大願を果たした。母子家庭で育ち、家族への恩返しの思いから埼玉栄高を卒業後にプロの世界へ進んだ。

同部屋の遠藤は角界屈指の人気を誇り、仲のいい貴景勝や同学年の朝乃山は大関に昇進して看板力士に。身近な存在の陰に隠れがちだったが、コツコツと自慢の突き押しを磨き、一気に花を咲かせた。