関脇照ノ富士(29=伊勢ケ浜)の、大関復帰の挑戦が始まる。日本相撲協会が春場所(3月14日初日、東京・両国国技館)の新番付を発表した1日、照ノ富士が都内の部屋でオンライン会見に参加。現在の心境について「やっと(大関が)近づいてきたかなと思います」と話した。

小結だった昨年11月場所で13勝、関脇だった初場所で11勝を挙げ、大関昇進の目安「三役で3場所33勝」まで、あと9勝と迫った。「内容が1番大事」と数字は気にしなかったが「とりあえず33勝は達成しないと始まらない。それを目標にして全力を出していい相撲を取りたいと思います」と気合を入れた。

想像通りの道のりだ。15年名古屋場所で新大関に昇進するも、両膝の負傷や内臓疾患などにより17年九州場所で関脇に陥落。その後も休場が続き、幕下に陥落した18年名古屋場所からは4場所連続全休。復帰した19年春場所では、序二段からの再出発となった。

しかし、そこから1度も負け越しはなし。19年九州場所で幕下優勝、20年初場所で十両優勝、幕内に返り咲いた20年7月場所では復活を印象づける2度目の幕内優勝を果たした。そしてつかんだ大関復帰へのチャンス。理想通りの2年間での復活劇も「予定通りです」とさらりと振り返った。

冷静な気持ちで土俵に上がる。報道陣から、1度目の大関昇進を決めた6年前と今の気持ちの変化を問われても「大した深い思いはない。土俵に上がったら一緒」「その時よりいい部分は特に考えていない。その時もいい部分があったと思うし、今もあると思う。冷静にやれているとは思う。特に変わったことはない」と淡々と話した。

ただ、今場所に懸ける思いは強く持っている。「本当にこの日が来たらなと思っていた。今場所でやっぱり決めておかないと。また最初から、ということになる。頑張らないとな、と思っています」と今場所で大関復帰を決める覚悟を口にした。

2月下旬に両国国技館内の相撲教習所で行われた合同稽古には参加せず、「ヘトヘトになるまで」部屋で稽古を重ねた。平幕の宝富士、照強、翠富士らと連日「20番から25番ぐらいやっている」という。ケガする前に比べると稽古量は減っているというが「ちょっとずつ増やさないとスタミナもつかない。できる範囲でやっている」と今できることに全力で取り組んでいる。また「どうやって体を強くしていくかしか考えていないので、その辺を相談しながらアドバイスを頂いている」と部屋付きの安治川親方(元関脇安美錦)にアドバイスを求めるなど、まだまだ成長段階だ。

運命の春場所まで2週間を切った。周囲からは過去と比べられがちだが「過ぎたことは過ぎたこと。考えてもしょうがない。目の前のことを精いっぱいやっているから今の結果に出ている。それに落ちているからこそ注目されていると思う」。しっかりと地に足をつけて土俵に上がる。