日本相撲協会は3月31日、大相撲夏場所(5月9日初日、東京・両国国技館)の番付編成会議と臨時理事会を開催し、春場所で3度目の優勝を果たした照ノ富士(29=伊勢ケ浜)の大関昇進を満場一致で決めた。

十両以下に落ちて大関に返り咲くのは史上初。都内の部屋で行われた伝達式で、照ノ富士は「謹んでお受け致します」と口上を述べた。15年の初昇進時と変わらない綱とりへの思いを、短い言葉に含ませた。

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膝立ちのまま昇進を伝える使者を迎え、照ノ富士は深々と頭を下げた。古傷の両膝に不安を抱えるためか、うまく正座をつくれない。協会公式YouTubeチャンネルの生配信でも視聴者から「膝が心配」「椅子に座らせてあげて」などとコメントが寄せられる中、照ノ富士は不安を一蹴するように「謹んでお受け致します」と力強く口上を述べた。

揺るぎない思いを強調した。伝達式後の会見で、照ノ富士は“シンプル口上”の意図について「前回とは気持ちは変わらない。1回でも経験してみたい気持ちがありますから」と説明。前回昇進した15年夏場所後の伝達式では「今後も心技体の充実に努め、さらに上を目指して精進いたします」と述べていた。男に二言はなし。23歳の時と最高位への意欲は変わらなかった。

照ノ富士の復活劇を間近で見ていた師匠は、弟子を手放しで称賛した。「相撲界全体に、諦めないで頑張ればやれるというのを示した。各力士のお手本になる。まだまだこれから相撲界全体で頑張る力士がいっぱい出てくる」。横綱昇進の可能性については「膝という爆弾を抱えている」と注釈をつけつつ「それを留意しながら頑張っていければ、まだまだいけるんじゃないか」と太鼓判を押した。

横綱誕生は17年1月の稀勢の里が最後。使者を務めた高島親方(元関脇高望山)は「3人の大関(正代、朝乃山、貴景勝)を見ていると、しっかりした体調で臨めば照ノ富士の方が1つ上」と“第73代”の筆頭候補と期待した。

3度の優勝を誇るが、大関としての優勝はまだない。「できるものならやってみたい。それこそ本当に1日の積み重ねだと思うので頑張ります」。大関照ノ富士の第2章が始まる。【佐藤礼征】

◆大関アラカルト

▼月給 横綱の300万円に次ぐ250万円。三役(関脇、小結)より70万円増。

▼待遇 海外渡航はファーストクラス。新幹線はグリーン席。車での場所入りは地下駐車場まで乗り入れ可。化粧まわしも関脇以下では禁じられている紫色が使える。

▼引退後 協会に残るためには年寄名跡が必要だが、元大関は現役のしこ名で3年間、年寄として協会に残ることができ、日本国籍取得者は委員待遇として「年寄」の上位に置かれる。