日本相撲協会の芝田山広報部長(元横綱大乃国)は30日、5月7日に東京・両国国技館の土俵周りで行われる「土俵上の応急対応処置講習会」について、開催の経緯などを説明した。

28日には境川部屋の三段目力士、響龍(ひびきりゅう)さんが急性呼吸不全のため東京都内の病院で死去した。28歳だった。響龍さんは春場所13日目の取組で、すくい投げを食った際に頭部を強打。自力で立ち上がることができず、救急搬送されて入院中だった。

代表による電話取材に応じた芝田山広報部長は、同講習会は響龍さんの死去を受けたものではなく、事前に開催が決まっていたと説明した。「1月場所に湘南乃海が脳振とうを起こして、立ち上がれなくことがあって、検討材料になっていた。専門家の先生、詳しい人にいろいろレクチャーしてもらって、今回、来週(5月7日に)やると決まってはいた。その中で昨日の響龍のことがあり、まだ発表できなかったので、昨日の段階では後日みなさんに(発表する)と伝えた。響龍のことではなく、以前から検討していた」。

1月の初場所10日目に幕下の湘南乃海-朝玉勢戦で、立ち合い不成立ながら両力士が頭同士でぶつかった際に、湘南乃海がフラフラになって立てなくなるアクシデントがあった。審判団が協議をして本人の意思を確認した上で取組をやり直しが、この判断は危険だったとされ、日本相撲協会は初場所後の理事会で審判規則の一部を変更。ルールの整備だけでなく、より緊急事態に備えるために、同講習会を開催する運びとなったという。

講習会には審判や警備の親方衆らが参加し、外部の医師の指導を受ける。同広報部長は「先生方に話を聞きながら、どういった形で対処したらいいか、講習される。状況判断もある。即動かしていいか、という判断もある。講習会でレクチャーされると思う。いち早く対処できるように態勢を整える」と話した。

日本相撲協会はAEDの設置を各部屋に義務づけ、定期的に講習を行うなど力士の健康に配慮している。同広報部長は「協会員の救急処置はAED講習会とかはやっている。消防訓練の救急対応もやっている。お客さんが倒れたときの場合もやっている。今回は土俵上で意識を失った。今までも脳振とうを起こしたり、張り手1発で倒れて意識もうろうとして土俵を降りていく人もいた。理事会で脳振とうを起こしたとき、どうするかは決まった。倒れ込んだときどうするか、いろんなケースがある。迅速に対応するため、今回の講習になった」と説明した。

春場所(両国国技館)は、講習会から2日後の5月9日に初日を迎える。