進退を懸けて土俵に上がっている横綱白鵬(36=宮城野)が、鮮やかな反転攻勢で初日から4連勝とした。平幕の隆の勝に背中を取られる場面があったものの、軽やかな身のこなしからの突き落としで逆転。6場所連続休場による相撲勘への不安を払拭(ふっしょく)する相撲内容だった。綱とりに挑む照ノ富士も、平幕の大栄翔を下して4連勝とした。

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こぼれかけた白星をがっちりとつかんだ。白鵬は右張り差しが不発となり、引き技を続けても決まらない。土俵際で、隆の勝に体を入れ替えられた。背中をとられて万事休す-。と思われたが、すかさず振り向き直って半身に。体勢は大きく崩れ、がら空きの左脇に頭をつけられて押された。それでも、慌てないのが横綱白鵬。突っ込んできた隆の勝を、左足で残りながら突き落とした。「ふーっ」と大きく一呼吸。たまらず笑みがこぼれた。

八角理事長(元横綱北勝海)は「隆の勝は下がっていたから最後、足がついていかなかった。それだけ白鵬の動きが良くなってきたということ。今日の相撲を見ると白鵬にとっていい流れになってきた」と評価。幕内後半戦の伊勢ケ浜審判長(元横綱旭富士)も「気持ちはなえていない。ここから勝ち星を重ねていくと、さらによくなるかもしれない」と復調を予感した。

6場所連続休場明け、3月の右膝手術、進退を懸けた土俵。さまざまな重圧や不安要素を吹き飛ばす相撲が続いている。

この日は今場所初めて、取組後のオンライン取材に応じなかった。負けた隆の勝は「いけると思ったら相撲は勝てない。最後の足がついていなかった」。白鵬は常々、若手の台頭に対して「横綱として壁になる」と言うように、この日も壁になった。【佐々木隆史】